自社の事業を定義する

「ひとこと」のパワーをあなどってはならない。 自社の事業ドメインをどのように定義するかで事業の展開が変わる。 たったひとことのコンセプトで、経営者の意識も社員の意識も劇的に変わる。 真の顧客ニーズに刺されば、あなたの「こんな会社にしたい!」が叶う。

「ひとこと」のパワーをなめんじゃねえ!

さて今日は、
自社事業定義のお勉強です。
事業ドメイン
ってやつですよ。
中小企業家同友会の経営労働委員会ってとこに長年所属していて、
強く実感することは、
経営指針づくりの学びの中で、
ここがいちばん目からウロコ率が高いってこと。
だからあなたも、
ここで出してください ̄O ̄)ノ
目ぇからウロコを(≡^∇^≡)
自社事業定義っていうのは、
>わが社の仕事は○○業です。
とか
>わたしは○○屋です。
っていうふうに、
文字どおり自社の事業を定義することです。
ドメイン(domain)とは「領域」のことでして、
どこからどこまでがあなたの仕事か整理するだけなんですけど‥‥
それだけのことが、
経営者ばかりでなく
社員さんたちの意識を劇的に変えることになります。
たったひとこと
が、
あなたの「こんな会社にしたい!」を叶える。
たったひとこと
だからこそ

言ってもいい。
それがコンセプトメイキングのパワーなのだから。
短いひとこと、
ワンワードに凝縮するからこそ伝わる可能性が高まる。
" "(/*^^*)/

経営指針の枠組み

そのことを解説するまえに、
経営指針作成の手引きを開いて、
ちょびっとだけ経営指針の枠組みを復習しておくといい。
指針 = 理念 + 方針 + 計画
でした。
経営理念については、
このサイトでも何回か取り上げてるので、
だいたいのところはわかってもらえたものとする。
これから解説する自社事業定義は経営方針の中、
「経営指針作成の手引き」第三章にあります。
■追記(2020):「経営指針作成の手引き」は2016年に内容が刷新され、「経営指針成文化と実践の手引」として中小企業家同友会の新しいカリキュラムに沿ったものが発行されました。このページの引用は、2002年に発行された「経営指針作成の手引き」からのものです。

経営方針とは、
経営理念の徹底とその具体化、
創造的実現を目指して、
中期(3~5年)のあるべき姿と目標を示し、
それに到達するための道すじを示すものです。


書かれていることからもわかるとおり、
経営理念を飛ばして経営方針を立てることはできないので、
まだ理念があやふやな人は経営理念のつくり方に戻るといいです。
第三章は
  1. 経営方針とは
  2. どのような会社を目指すか
  3. 自社を知る
  4. 経営戦略を立てる
  5. 経営方針を3ヵ年計画にまとめる


5部構成になってまして、
このうちの4のところに次の文章があります。
(2)自社の事業を考える
 経営戦略を策定する上で、
まず必要なことは自社の事業について考えることです。
 事業をどのように定義するかで事業の展開が大きく変わってきます。
自社の事業を考える場合、次の5つの質問が役立ちます。

  1. わが社の顧客は誰か、どこにいるのか。
    現在の顧客だけでなく、潜在的な顧客についても考えます。
  2. 顧客が本当に求めているものは何か。
    顧客にとって価値あるものは何かについての問いです。
  3. 我々の事業は何か。
    どのように定義したらよいかを考えます。
  4. 我々の事業は将来どうなるのか。
    予想される市場の構造的変化をふまえ、市場における潜在的需要と市場動向を推察します。
    このとき現在の商品やサービスによって満足させられていない顧客の欲求は何かについて考えます。
  5. 我々の事業はこれでよいのか。
    今のままでよいのか、事業業態の見直しが必要なのかについて反省的に検討します。

やきとり屋じゃダメなのかい!?

ここで仮に
あなたがやきとり屋さんだったとしましょう。
いっぱいありますなぁ、
やきとり屋さん。
わたしの家から徒歩10分の範囲でも20件くらいあるL(・o・)」
その中で味やら値段やら雰囲気やらで差別化を図っていくんだから、
えらいもん。
で、
あなたの会社の事業を、
経営者のあなたが「やきとり屋」と定義したとしよう。
社長が
>うちは「やきとり屋」
と言い切るなら、
社員さんもみんな同様に
>うちは「やきとり屋」

納得するやろうね。
それのどこに問題がありますか?
一見、
なんの問題もなさそうだ。
けど?
事業が「やきとり屋」だといわれたら、
>鳥を焼くのが仕事だ

思ってしまうのが素直な人間ってもん。
だな?
>鳥を焼くのが焼き鳥屋。
>焼いた鳥を食べて帰ってもらったら商売は完結。
>他に何があるっちゅうねん?

っていう理屈になる。
しかしそれが、
経営指針づくりの勉強会で、
あれこれ知恵をひねっているうちに、
>このへんじゃなかなか手に入らない本物の地鶏を
>心を込めて召し上がっていただいて、
>お客さんの感動を演出するのがオレらの仕事や!
>喜んで帰ってもろてナンボの商売や!
>焼いた鳥やったらなんでもええんじゃないんや!


気づく社長があらわれる。
傍から見ていると、
>おっ(ё_ё)?
>おまえ、なんやねん急に。
>そこまで熱くならんでも‥‥


思うくらいなんですが、
なんせ本人は目からウロコが出てますから。
カルト教団みたいなノリになってくる。
いいんです。
目先の資金繰りに追われていたりすると、
えてしてこういう肝心なことを忘れてしまいがち。
なんのための経営だったかを忘れる。
そうすると、
はたらき甲斐もへったくれもなく、
ますます追いまくられていく毎日が続く。
まずは気づきの第一歩なんだから、
よしとしよう。
ま、
実際のところ、
お客さんは鳥を食べて腹をふくらませて帰るだけが目的ではないでしょ。
>めっちゃうまいやんけ!

いう感動。
>それでこの値段か!

いう、
満足を超えた驚き、感激、感謝を味わうためにお店に来られるわけでしょ。
そこを深めていくうちに、
あなたの事業定義が
「こだわり地鶏で感動演出業」
みたいに変わります。
やきとり屋こだわり地鶏で感動演出業
そうすると、
次に従業員の意識がガツッと変わります。
きのうまでは「やきとり屋」の社員だったのに‥‥
今日から「こだわり地鶏で感動演出業」になる。
焼いた鳥を食べて帰ってもらうだけでは不十分なのだ

わかります。
灰皿交換の動きひとつとっても変わってくるし、
いらっしゃいませの一声も変わる。
>あーアホらしぃー
>オレは鳥を焼いてるだけのほうが楽でよかったわ

って、
ばかばかしいと感じる社員はここで辞めます。
それはしゃあないんで、
辞めていただきましょう。
従業員がそんなふうに変わると、
お客さんも変わる。
そうやってあなたのお店は、
飲食店ガイドブックの分類上は同じ「やきとり屋」さんでも、
やきとり屋A、やきとり屋B、やきとり屋C、D、E‥‥
とは明らかに雰囲気のちがった抜群のお店になっていくんですね。
おめでとうございます☆(*^o^)乂(^-^*)☆
 あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である。
   * * *
 企業の目的としての事業が十分に検討されていないことが、企業の挫折や失敗の最大の原因である。逆に、成功を収めている企業の成功は、「われわれの事業は何か」を問い、その問いに対する答えを考え、明確にすることによってもたらされている。
 企業の目的と使命を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。事業は、社名や定款や設立趣意書によってではなく、顧客が材やサービスを購入することによとり満足させようとする欲求によって定義される。顧客を満足させることこそ、企業の使命であり目的である。したがって、「われわれの事業は何か」との問いは、企業を外部すなわち顧客と市場の観点から見て、初めて答えることができる。
 顧客にとっての関心は、彼らにとっての価値、欲求、現実である。この事実からしても、「われわれの事業は何か」との問いに答えるには、顧客からスタートしなければならない。すなわち顧客の価値、欲求、期待、現実、状況、行動からスタートしなければならない。
   * * *
 したがって「顧客は誰か」との問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、もっとも重要な問いである。やさしい問いではない。まして答えのわかりきった問いではない。しかるに、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するかがほぼ決まってくる。P・F・ドラッカー「[エッセンシャル版]マネジメント──基本と原則」より