アスペルガー

いったんスイッチが入ると休憩も取らずにひたすらひとつのことに取り組む凄まじい集中力。 プログラマとしてシステムを開発する仕事なら、コミュニケーション負荷も少ないからアスペルガーには好都合。 規則性や手順へのこだわりを強みとして活かせば顧客層も見えてくるだろう。


発達障害ってどういうこと?

>あなたが人間関係でいつも失敗するのは、
アスペルガー症候群のせいですよ。

と、
もしも20代に教えてもらっていたら、
状況は改善していたかな?
ひとつのことに異常にのめりこんでペース配分ができず、
決まり事に反発して団体行動になじめず、
まわりが傷つくようなことも平気で言ってしまう。
>それって典型的なアスペルガーなんですよ。
>広い意味では自閉症に含まれる、
>発達障害の一種なんです。

とかなんとか言われていたとしても、
ふつうにベラベラしゃべれてたわけだし、
スポーツも活発にやってたし、
学校の成績も優秀だったんだから、
大きなお世話ですよって感じだったでしょうけどね。
>いえいえ、
アスペルガーは知的障害を伴わない自閉症なんです。
>なので学校の成績は関係ありません。
>ほっとくと強迫性障害や社会不安障害、うつ病といった
>二次障害を併発してしまうから要注意ですよ。

へ~っ、
そうなんですか ┐(-。-;)┌
変わったヤツだとか自分勝手でわがままだとか、
コミュニケーションが下手だとか、
そういうのはもう、
うんざりするほど言われ続けてましたけど、
だからってそれが障害ってことになるとどうでしょう?
アスペルガー度がいちばん高かったのは、
10代後半から20代にかけてだったと思いますが、
いまからもう30年もまえのことでして、
当時はまだ日本にそんな言葉すら入ってきてなかった。
もっとも今後は
アスペルガー症候群という名称もなくなって、
自閉症スペクトラム

ひとまとめにされるようなんですけど、
もし、いま、
そんなふうに診断されたら‥‥
もう少し自分を客観的に見て、
こういう傾向があるから人より注意しないとダメだなとか、
まわりに不快感を与えることになるからこれはやめとこうとか、
お利口さんな大人の対応ができるかもしれませんね。
協調性がないのを障害のせいにして、
言い訳に使ってしまうかもしれませんがなあ‥‥

人間アレルギー


人間関係ってもんが、
とにかくめんどくさかった。


群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い‥‥
って、
これじゃ米倉涼子「ドクターX」ですけど、
まあそんな感じ。
まわりに合わせられないんだから団体行動できません。
寄ると触ると波風が立つ。
神経クタクタの人間アレルギー
誰のお世話になんかならなくったって、
ひとりで生きていけますから、
お願いですからほっといてちょうだいよ。

──そう言いたくもなる。
しかも、
きちんとしているのは自分で、
まわりのほうがアホでちゃらんぽらんに見えているんですから、
これは始末が悪いんですよね。
アスペルガーのきわだった特徴のひとつに「過集中」があります。
文字どおり集中しすぎるってことなんですけど、
興味のあるものにいったんスイッチが入ると、
何時間もぶっ続けで同じことにのめり込むんです。
トイレに行くのもメシを食うのも忘れてとにかく没入してしまう。
休憩も取らず人に話しかけられても上の空で時間の感覚も麻痺。
だから、
常人に真似のできない天才的な作品を創り出すこともできる
という意味では、
たとえ病的な特徴であっても悪い面ばかりではない。
が、
本人の目に映るまわりの人間は、
適当なところで物事を投げ出してしまう人たちですから、
許せない気持ちになって攻撃的になりがちです。
かなり危険ですよね。

人としゃべらなくて済むんなら

パソコンというものを
初めて触ったのは28歳。
いきなりどっぷりハマりました。
これで事務処理効率を何倍にも高めることができたら、
人としゃべらなくて済むじゃないか。
必然的に、
そういうワークスタイルに惹かれていきました。
1989年。
ITという略語もまだなかったころの話です。
インターネットもありません。
ケータイもまだ使ってません。
パソコン仕事が儲かることなのかどうか、
まだぜんぜんわかってません。
でも、よかった。
それで食っていける可能性があるなら、
他に何もしたくなかった。
誰ともつきあいたくないくせに、
恋愛だけはナシで済ませられなかったので
よけいややこしかったけど。
これは後天的に可変なメンタル以前の問題、
性格というよりも、
脳が志向しているもんだから逆らえない。
自分の遺伝子と闘ってもしょうがないし。
まわりのみんなが楽しいと楽しいといって浮かれていることが、
ちっとも楽しくないってこと、
あなたにもありますよね?
また反対に、
まわりのみんなが難しい難しいといって嫌がっていることが、
自分にとってはちっとも苦にならない。
それどころかむしろ快感だってこともありますよね?
人はジグソーパズルのピースみたいなもんだっていうでしょ。
そんなふうに凸と凹が組み合わさるからおもしろい。
この歳になると、
そんなこともだいぶ理解できるようになってくるので、
人間関係も楽しめる。
ちゃらんぽらんでだらしなく、
どうしようもないヤツだと若いころには切り捨てていた相手が、
いまは上得意のお客さんになるんですからね。
まわりの人が苦手なことで自分が得意なこと、
それが仕事になってる。
自分には簡単にできることが、
バカじゃないかと思うくらい下手クソな人がお客さんになる。
ありがたいことです。
こんなこともわからなかった若いころの自分が
なんだか憐れです。
若いっていったってもう30近いええ大人だったんですが、
それでも当時は人間関係がめんどくさいっていうだけのことで、
とにかく変態的なまでにパソコンに取り憑かれた。
MS-DOSの愛想ない真っ黒な画面でしたけど、
プログラムを書くことにのめりこんだ。
ヤバかった。
人間とちがってきちんと命令したとおりに動く。
その爽快感が鮮烈でした。
一から十まで自分ひとりで書くことにこだわりました。
プログラムがまちがったらコンピュータは動かない。
それは100%自分のまちがい。
白黒はっきりしたことしか受けつけない脳には、
この潔さが快感でした。
「マッキントッシュ」
また別の方向でヤバかった。
PhotoshopIllusrator というアプリ、
いまでもある定番ですが、
それをフロッピーディスクでインストールしていた時代でした。
1992年。
喉から手が出るほど欲しかった、
Quadra(クアドラ)っていう当時の最上位シリーズ。
車が買えるくらい高価だったし、
だれでもかれでも所有できるものではありません。
生涯最高に思いきった一世一代の買い物です。
だからこそでしょうか、
もう優越感に浸りまくりで狂喜乱舞のエクスタシー。
ギーコガーコと音をたて、
ゆっくりのそのそと動いてましたけど、
ギザギザのないなめらかな曲線(ベジェ曲線)が描ける。
その技術に最初に触れたときの驚愕は
凄まじかったな。
いちばんハマったのは PageMaker(ページメーカー)っていうDTPソフト。
(のちにアドビに買収されるアルダス社の製品で、
いまの InDesign。)
Illustrator で描いたイラストや Photoshop で加工した写真がページに貼りつけられて、
テキストのまわりこみも簡単でレイアウトが自由自在。
血管が破裂するくらい興奮しました。
しかし残念ながらデザインの才能はイマイチだったため、
この夢のようなマッキントッシュを仕事に活かすことはできず。
だから仕事としては業務プログラムを書き、
趣味としてミニコミ誌をつくることにしました。

ここでちょっと脱線──
わたしがマッキントッシュでつくっていたミニコミ誌は、
不定期発行でたった300~500部くらいのもんでしたが、
シーナ&ロケッツのシーナさんと鮎川誠さんに
インタビューさせていただいたことがあったんです。
1995年、
ローリングストーンズの初来日記念特集号でした。
ある地方の小ホールでのライブ前でしたが、
リハーサルで「サティスファクション」をやってくれました。
ぐちゃぐちゃにかっこええギターとボーカルでした。
そのシーナさん(本名・鮎川悦子さん)がつい先日、
子宮頸がんのためお亡くなりになりました。
ローリングストーンズのステージにひとり日本人ギタリストがゲストとしてプレイするなら、
そこは心情として鮎川誠さんであってほしかったんですけども。
ご冥福をお祈りいたします。

ま、
どっちにしろ
寝ても覚めてもパソコン生活だったわけですね。
いったんパソコンのまえにすわったら、
朝から晩まで、
晩から朝まで、
止められない止まらない。
どうしてもこれが自分の職業でなければおかしいと、
思いこむまでに至りました。
そんなある日の明け方のことです。
>おまえはパソコンと心中しなさい。
と、
神の声が聞こえました。
もちろん幻聴でしょうけどね、
パソコン浸りで睡眠不足だったので。
しかしそれからもわたしの過集中癖は続き、
プログラムを書くことが職業となり、
ついに会社設立に至ります。
さらに会社設立から10年後、
デザインスタジオを開設(名ばかりですが)し、
三流デザイナーとしてホームページ制作も事業化しました。
会社は現在18期、
わたしたちのお客さんになっていただける人っていうのはどんな人なのか、
だいたいわかってきました。
えてして、
他人から見た自分の短所をひっくりかえしたところに
好ましい顧客ターゲットがあるもんです。
短所と長所は表裏一体であるともいえますね。

空気が読めない

たとえばわたしはイベントなどで、
次々と気を利かせて準備をしたり片づけものをしたりすることが苦手です。
椅子を並べる、飲み物を買ってくる、
ゲストの方を案内する、
空調を確認する、配布物を揃える‥‥等々。
まわりの人がテキパキと動いている中でひとり、
ボーッと突っ立って眺めてるヤツがいたらどうです?
邪魔でしょ。
自分も手伝おうっていう気持ちはあるけど、
おろおろするばっかりで何をしたらいいかさっぱりわからない。
若かりしころはこれが苦痛で、
だから団体行動全般から自分を遠ざけていたわけですが、
いまはもうそういうキャラクターだってことにしてある。
えらそうにふんぞりかえりたくってそうしているわけじゃないんだけども、
まわりからそんなふうに見えてしまうならしかたない。
そういうことにしといてくれたらいい。
それが楽なんだからそれがいい。
アスペルガー的な性癖が多分にあるとしても、
それはそのまま強みとして活かす。
あなたが簡単にできることが
わたしにはできないが、
あなたにとって苦痛でしかないことが、
わたしには快感だってことが必ずありますから、
それが見つかるまで視点をずらしながら探します。
わたしの脳は、
本人の意図とは関係なく、
生まれもった器質として情報処理と相性がよいらしい。
もっと突きつめていうと、
正規化
です。
データベースの正規化っていう作業に関して、
脳が本領を発揮する。
好きっていう表現が合っているかどうかわかりません。
勝手に反応するもんなんで。
データベースを見たら正規化したがる。
これは、
テーブルの上に乗ったナイフやフォークやお皿を、
きちんと並べないと気が済まないのと似ています。
その角度や幅に
変態的なこだわりがある。
美しく正規化されていないデータベースは気持ちが悪い。
と、これはもう
情報処理における潔癖症といっていい。
複雑に入り組んだデータベースに鋭いメスを入れ‥‥
あ、
これもどっかで聞いたフレーズですが、
さまざまな謎や疑問を徹底的に究明し、
もつれにもつれた糸をほぐしてほどいていくことに
奇妙な快楽を感じてしまうヤツなので、
究極的にめんどくさいERPもどきのシステムを開発することが
生き甲斐になったのは必然の流れ。
顧客のニーズを超えて潔癖ですから、
そこまできれいに磨けと頼まれたわけでもないのに、
ピカピカに磨いて等間隔に揃えて並べてしまう。
病気だとしてもいいじゃないですか。
社会に役立てるように使えるならば、ね。
むかしから
バカとハサミは使いよう
っていうでしょ。
自閉症スペクトラムだってなんだっていいじゃないですか。
健常者じゃなくったっていい。
逆に、
その人にしかできない強みがあるはずです。
あなただって、
きっとどっか病んでるでしょ?
わたしにはわたしの並べたナイフとフォークとお皿の配置が、
いちばん美しく見えるんです。
ただの1ミリも動かしてもらっちゃ困る。
──ところがお客さんはそうじゃない。
きちんと並んでるかどうかは問題じゃない。
自分たちがいつも使ってる箸をそこに置けという。
創業初期はこれでお客さんとずいぶん揉めましたね。
お箸の長さも柄もみんなバラバラ。
角度や幅や色合いに無頓着で寛容なそういう方々こそが、
わたしに仕事を依頼してくださってるんですから。
ジグソーパズルの凸と凹ですからねぇ‥‥(ё_ё)
どういうタイプの経営者が自分を求めているか、
相性が読めるようになって、
ようやく社会に気楽な居場所が見つかった感じです。
情報処理技術をビジネスモデルに組みこめる経営コンサルタントとして、
特異な価値を発揮しながら成長し続けている。
20年まえに書いたプログラムが、
まだ稼いでくれてる。
反対に、
天敵も察知できます。
場の空気が読めなくて人の何倍も叱られてきたおかげで、
アンテナが敏感になってるんです。
正義漢ぶってえらそうに、
>なんだその態度は!
って、
上から目線で見下してくるタイプ。
>常識をわきまえろよ
っていう威圧感ね、
言葉で注意されなくても目つきでわかります。
中途半端なエリート層で、
公務員に多いタイプです。
大企業の中間管理職にも多い。
枠からはみ出している人間性をリスペクトできない、
常識人っぽい方々ですね。
なんせわたしは態度が悪いんですって。
すんませんなあ。
自分を見下すそういう人種を避けているうちに、
おおらかな中小企業ばっかりを相手に仕事するようになったんでしょうけど、
いくら中小企業でもそこそこ立派な規模になってきますと、
天敵があらわれる率が高くなります。
くわばらくわばら。
アウトロー扱いされて迫害を受けるか、
天才だと称讃されるかの紙一重。
きわどいサバイバルレースだったかもしれませんが、
それもむかしの話。
いまはとても穏やかでハッピーです。
排除する意図がなくても、
自然と居心地のいい人たちが集まってくれるようになってきて。
なんかムカつくしめんどくさい天敵みたいなヤツは、
まだ3年にひとりくらい現れますけどね。
これって多いですか?
>こいつ、
>めんどくさいしムカつくから、
>もう抹消してしまおう。

ってヤツね。
すっきり記憶から抹消したくっても目の前でウロチョロされることもあって、
やっぱりめんどくさいんで、
ほんとうははじめから出会わないのがいいんですけども。
まだそこまで自分のステージが上がってないってことは修行不足ですね。
反省しましょう。
これからもわたしは、
情報の5Sが苦手なお客さまを大歓迎します。
ルーズでちゃらんぽらんで慈悲深いみなさんを愛してます。
わがままで不器用な社長さん、
大好きです。
目くばり気くばりが行き届き、
おもてなしの心であとかたづけのできるあなたを大尊敬します。