社員の心がバラバラになってしまった会社の件

ZOZOがソフトバンクに身売りするというニュースが世間を賑わしたのは、このページの動画を撮影する直前。 上場からわずか10年で同社の時価総額1兆円を突破させた凄腕の前澤友作社長は時代の寵児。 規模はぜんぜんちがうけど、今回登場する中小企業の話とちょっと重なるとこあるかなって感じます。


このページの内容について動画でも


急成長って幸せなの?

イケイケどんどんでぐいぐい伸びてる会社、
大企業にもありますし、
わたしの身近なところにある中小企業にもあります。
わたしはじわじわ伸びるのが性に合うせいか、
ワッショイワッショイでがんがん伸ばしている会社は、
どうもたいへんそうで、
そこで働く社員さんたちもしんどそうに見えてしかたがない。
だからずっと前に、
成長ってしないといけないもんなんだろうかっていう疑問を呈したこともある。
インターネット衣料通販大手ZOZO(ゾゾ)が、
ソフトバンク傘下のヤフーに約2400億円で身売りするというニュースが世間を賑わせている。
何かとパフォーマンス先行で、
世間の耳目を引くことが多かった前澤友作社長(43)は、
みずからワンマン経営者だったことを認めてますが、
さあ、
ZOZOで働いてる人たちはどんな感じだったんだろうか。
社員の待遇面では
>ボーナス全社員一律で、
>階層が同じならば給与も全員同じという制度

とか
>1日6時間労働
が話題に上ることが多かった。
けど、
それ以上に騒々しかったのが社長のパフォーマンス。
>ストラディヴァリウス1717年製「ハンマ」を自身のコレクションに追加
とか
>民間人で世界初となる月周回ツアーへ参加すると発表
とか
>女優の剛力彩芽と交際
とか。
‥‥とにかくメディアのネタには事欠かなかったけど、
いわゆるお調子者によくある独特な軽薄さも感じられ宝、
>そのうちヘタこいてしくじるに決まってるわ
って冷めてた人も多かったはず。
成功者であることはまちがいないけど、
ま、
やってることに哲学みたいなもんが感じられなかったせいか、
あの人のどこがスゴいのかよくわからなかった派だ。

売上至上主義ってどーよ

ZOZOの前置きはそれくらいにして、
もっと身近なところで起きているリアルな悲劇。
みずから創業した会社を売上至上主義で引っぱってきた滝田社長(仮名)の事例だ。
20人いた社員のうち4分の3にあたる15名が一斉に退職という、
イタすぎる話。
直接お目にかかったことはないので、
弘美さんから聞くところの雰囲気で判断するしかないが、
想いが熱すぎたり強すぎたりする社長に起こりがちな大爆発だろう。
>なあみんな、
>わかってくれてるよな、
>オレの気持ち。

>いつかゼッタイいい思いさせてやるからな、
>ついてきてくれよ!

って。
会社が順調に伸びて、利益率もよくて、
すごいですね、すばらしいですねとまわりから高評価を受けてたら、
社長は自分の手腕に疑問をもつ機会はないですね。
>もしかしてオレっておかしいのかな?
と、
一瞬くらいは頭をよぎったとしても、
うまくまわっているんだからやり方は変えられない。
その一方で、
社員の心の中には不満がじわじわと鬱積。
>どうせ社長は何も聞いてくれないし、
>わたしたちの気持ちなんてわかりっこない。

っていうタイプの、
やるせない想いが積もるのみ。
積もって積もって積もって積もって、
恐ろしいくらい静かに積もり続ける。
恋人が別れを切り出すときだってそうだし、
離婚だってそう。
爆発するときはもう止められない流れ。
成功体験ばっかりで自信のある人ほど、
途中経過が目に入らないから、
寝耳に水
となるわけだ。
売上至上主義なんて、
シンプルでいいかもしれないけれど、
売上以外の多くのものを犠牲にしますって宣言してるのと同じなんだから、
どっかで破綻するってわかりそうなもんだが、
売上が伸びずに苦しんでいる会社が大半という現実の中、
右肩上がりを達成してきたがゆえに大切なことを見失ったとしたら皮肉な話だ。

見せかけの愛では心は動かない

>わが社はいつでも社員の幸せを第一に考えてます!
とか、
言うだけなら簡単。
社長は決してウソをついているわけじゃないけれど、
社員はみーんなわかってます。
>全社一丸となって‥‥
なんて、
そんなん社長のエゴですよ。
しかし100分の1くらいの確率で、
ほんとうにチームワークがよくて、
お互いが仲良くて信頼しあってる感じで、
まとまりのある会社や部署があります。
社員が口々に
>いいですよ、うちの会社。
>社長のこと好きですし。

って言う。
社内結婚が多かったりする。
確率がとても低いのが残念ですが、
でも、
うらやましくなるくらい、
外から見ててもいいなって思える会社はあります。
離職率は正直だといえますね。
いまの日本は未曾有の人手不足が長く続いていて、
10年前とは別世界。
薄っぺらい従業員満足は剥げ落ちて、
容赦なく社員は辞めていく。
何がまちがってたのか、どうしたらよかったのか、
人間性と関わってるんで、
なんぼ考えても追いつきません。
ご多分にもれずわたしの会社も、
次から次へぼっこぼこ社員が辞めてくれたおかげで、
自分が経営者の器でないことをしっかり自覚することができました。
だから滝田社長も、
ここが学びだと思うんですよ。
40年分の学びがいっぺんに来た、
と。
売上至上主義がぜんぶダメとはいいませんけど、
滝田さんには合ってなかったということなんでしょ。
自分は自分なりに社員を大切にしてきたと、
滝田さんは言うかもしれないが、
残念ながらそれはウソ。
でたらめの愛情。
愛してる、愛してる、と、
言えば言うほど相手はシラける。
若いころの失恋から学ばなかったのか。
だからしょうもないプライド捨てて、
やり方をあらためよう。
残った5人の社員と新しい文化を、
ゼロベースで作り直してもらいたいですね。