数字に強くなって利益計画表を作ろう

数字が苦手だという経営者は少なくない。 MG(マネジメントゲーム)やってたら数字がわかるっていうのも事実でしょうけど、まずは「決算書になじむ」ことから。 決算書から利益計画表へ、数字の転記ができたら第一関門通過!

おカネ、いくら欲しいの?

経営指針づくりのセミナーに何度も参加していて
しばしば耳にするのは、
前半の経営理念や事業分析のところはいいんだけれど、
数字のところになったら急にわからなくなるっていう声。
>あなたはなんのために会社を経営してますかぁ?
>どんな会社にしたいですかぁ?
>10年後の売上はいくらくらいになってますかぁ?
>社員は何人くらいまで増えるでしょう?

‥‥なーんていうテーマでは
頭から湯気ポッポでヒートアップしてた人が、
>じゃあ利益計画表を作ってみましょう!

なったとたん、
いきなりショック死状態で、
ピクリとも動かなくなってしまう。
あれ?
どうしたのかな?
ツンツン    ←からだをつついてみる
。 。 。 。   ←無反応(死んだふり?)
‥‥みたいな。
あの‥‥ですね、
ままごと遊びじゃないんですからね。
事業を大きくする夢を見るのは自由ですけども、
それを実現するためにはカネが動くんですよね、
カネが。
仕入れたり売ったりするんですよね。
じゃああなた、
なんぼほしいんですか?
(ё_ё)?

あなたは数字に強いといえるか?

あ、
ところであなたは
数字に強いですか?
決算書をパッと眺めただけで、
たちまちその会社の経営課題が見えてくるというような強者もたまにいますけど、
粗利(あらり)とか販管費(はんかんひ)とか経常(けいつね)とか、
日常会話に出てくる言葉の意味くらいはわかるの?
そんなことを何も知らずに、
ヒット商品のアイデアひとつで儲かるって思いこんで、
親兄弟からダンナからパトロンからお金をかき集めたところまではいいけれど、
あっというまに元手が底を突くと「だまされたーっ!」って泣きベソかいて、
なんでもかんでも人のせいにしている夢見る夢子ちゃん‥‥
と、
いくらも変わらない新米起業家が実際にたくさんいるもんね。
‥‥コワいわ(ё_ё)
とかなんとか言ってますが、
そういうわたしも、
実は、けして数字に強いとはいえない。
よろしいか。
このキクゾウは自慢じゃないが、
クラウドERPをひとりでつくってしまうくらいのド変態ですから、
売上や仕入や経費を入力したら月々の試算表が作成される
っていう会計メニュー部分のプログラムも自分で書いておる。
簿記一巡の手続きなんて当然のように頭に入っているし、
どんな取引をしたらどういう仕訳になるかもわかるし、
自社の決算書は自分で作る。
高校時代も数学がいちばん得意だったし。
でも、そんなわたしでも、
数字に強いかというとそうではない。
ほな、いったい数字に強いってどういうことか?
会計法規なんていくら知ってても関係ないし、
電卓パカパカ叩くのが速いっていうだけではぜんぜんダメ。
まずひとつにはパーセントの変換に鋭いこと。
つまり、
に強いってことがいちばん。
右脳で答が絵になって見えてるっていうか、
決算書が色分けされて面積で浮かぶっていうか、
催眠術にかかりやすいタイプっていうか、
暗算を超えた領域でパッとわかる。
そういうのはなかなかマネができないが、
訓練の方法はあるから、
数字に強くなることをこのサイトの目標に加えるとして‥‥
ま、
今日のところは初級編なので、
ここまで読んだあなたよりは、
たぶんわたしのほうが数字に強いっていう前提で話を進めよう。

初級編の第一関門

数字に強くなるための第一歩を、
決算書になじむことからはじめよう。
よその決算書じゃなく、
あなた自身の会社がいい。
決算書からパッパッと数字を拾って、
利益計画表がピシッと作れるようになること。
半年がかりで経営指針書を完成させたのはいいが、
よく見たら利益計画表が入ってないっていうパターン、
非常に多いので。
作ったんだけれども見せたくない
っていう人も多い。
>次回は経営計画書の作り方を学びますので、
>自社の決算書を持参してください。


て言われても持ってこようとしない。
せっかくまわりに経験豊富な先輩経営者がたくさんいても、
これじゃいいアドバイスが集まらない。
>ウチの数字がよそに漏れたらたいへんなことになる!

て神経質になる人が多いですけど、
あなたがムキになるほど、
たいへんなことはきっと起こらないんだから、
とにかく数字を怖がらないでほしい。
そしてこれからは、
漏れてもたいへんなことにならない経営をやりましょう。
数字が苦手なのはあなただけではないのでご安心を。
けっこう羽振りよく儲けている会社のオーナーさんでも、
数字がわからない、
決算書も読めないっていう人はたくさんいます。
中小零細の社長は数字がわからない人のほうが圧倒的に多い
>だったらアタシも
>わかんなくっていいじゃーん(*^_^*)

‥‥って、
そこまで安心してはダメです。
ギャンブルみたいな商売を続けていくつもりならそれでもよろしいが、
なが~く儲けたいんだったら数字がわからないと話になりません。
数字から逃げないこと
はい、では、
いますぐ机の上に決算書を出してください。
‥‥といわれて、
パソコンに入ってていつでもスッと開けられるあなたはそれだけでかなり優秀。
「決算報告書」と書かれた表紙の他に数枚の書類がありますね?
その中に、
次の3つの書類が必ずあります。
  • 貸借対照表(BS)
  • 損益計算書(PL)
  • 株主資本変動計算書(SS)

このうち
株主資本変動計算書
なんていうのは、
わたしが起業したころには作らなくてもよかったのに、
2006年に新「会社法」が施行されてから、
これも出しなさいってことになった。
ま、大半の中小企業の株主は社長と社長の身内ばっかりでしょうから、
意味なんてまだ理解できなくてもいい。
キャッシュフロー計算書(CF)
っていうのを作っている会社もあるかもしれないが、
これも義務ではないので入ってなくてもいい。
製造原価報告書
っていう書類は製造業にかぎり入っているもんで、
これはかなり大事なもの。
販売費および一般管理費明細
みたいな書類もあるはず。
損益計算書に載っている合計額の内訳が書いてあるものだが、
内訳とはいえすごく大事。
さあ、
この中で特に大事なのは上の2つ、
すなわち貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)がぶっちぎりに大事。
その2つに比べたらあとの書類はどっちでもいい。
(どっちでもいいというのは、
学びの順序からするとさしあたりどっちでもいいという意味で、
そこに書いてある数字がどっちでもいいというわけではない。)

BSとPLの見方がわからず、
そこからどうやって利益計画表に数字を写したらいいかわからないとなると、
経営指針書づくりは行き詰まりますね。
つまりここが初級編の第一関門なのだ。

数字わからんショックをやわらげる

経営指針作成の手引きを持ってる人は、
第3~4章に利益計画表のサンプルが出てるので、
こんな感じの表をエクセルかなんかで自社用にアレンジしたものを準備しておこう。
そして決算書を広げて、
かわりばんこに見比べながら数字を写して(移して)いく。
そうするといきなり
>どこにどの数字を入れたらいいかわからんっつーの(-_-#)!
ってことになりますね?
はい、そうなんです。
それ、フツウの反応なんで、
焦らなくてもよろしい。
「売上高」とか「外注費」「減価償却費」みたいに、
決算書と利益計画書で同じ言葉が使ってあったら誰だって写せるのに、
「人件費」とか「その他経費」とか、
そのまんまじゃ写せない数字があるからショック死してしまうんじゃなぁ~。
まあそう死に急ぐでないぞ。
変動費とか固定費とかいう言葉も出てくるが、
これは専門家でもなかなか解釈がむずかしいのじゃ。
ゆえに、
おまはんらがわからんのも無理からぬことなのじゃ。
逆にいえば、
まだわからんでもよいってことでもあろう。
(むずかしくなってきたから、
むずかしそうにしゃべっておるのじゃがな。)

深く学びたい御仁にはMG(マネジメントゲーム)をおすすめしておるが、
意味を理解するのはあとまわしにして、
ここではとにかく利益計画表の空欄を埋めるようにしたらよかろうが。
たとえば「人件費」は、
販売費および一般管理費明細
に書いてある費用内訳のうち、
役員報酬、給料手当、法定福利費、福利厚生費といった
「人」に関わる費用を足し算したものとなる。
会社によっては、
臨時雇賃金、退職給付費用、通勤費などの費目があるかもしれないが、
これも足す。
このように利益計画表には、
決算書から単純に「転記」すればいい箇所と「計算」して写す箇所があるってことを、
ここで学んで知っておこう。
それだけでショック死のリスクはかなり軽減される。
「その他経費」もクセ者じゃな。
さっきの「人件費」の足し算がわからんくらいじゃと、
その他がどの他なのかさっぱりわからんじゃろな。
ここにはな、
「販売費および一般管理費」の合計から、
さきほどの「人件費」「減価償却費」を引いた残りの数字を入れるんじゃ。
なぜ減価償却費(げんかしょうきゃくひ)っていう科目が、
他の経費とちがう特別な扱いになるかわかるかの?
おお、そうじゃ。
大きな買い物をしたときのお金について、
実際に使ったときにドーンといっぺんに損金で落とすんじゃなしに、
何年かにまたがってちょっとずつ計上するという特別なルールがあるからじゃな。
はてさてところで、
「経営指針作成の手引き」に出ているフォームでは、
「付加価値」っていう欄があるが、
これはどういう意図なんじゃろうな?
中小企業家同友会は「付加価値」っていう概念を好むのであろうか。
この欄は製造業でも「売上総利益」と書き換えたほうが、
世間一般の感覚からするとわかりやすいかもしれんのにな。
「営業利益」の欄がないのもわかりづらいな。
なるべく決算書に近づけておくほうが先々も助かるんじゃから、
変動費とか固定費なんていう言葉も使わんほうがよいかもしれん。
なんとまぁ、
ひとすじなわではいかんことよのぉε=( ̄。 ̄;)
製造業の諸君はさらに気の毒じゃぞ。
原価計算
という難関が待ち受けておるからな。
この原価計算というものには、
全部原価計算(FC)と直接原価計算(DC)
という2つの方式があって、
利益計画表の作成にあたっては、
この2つちがいをあるていど理解しとかねばならん。
(理解できてもできなかったとしてもな、結論から言うとな、
利益計画は直接原価計算でやれってことなんじゃがの。)

同じものを同じように仕入れて同じように作って同じように売っても、
どっちで計算するかによって営業利益が増えたり減ったりするというんじゃ。
いくら儲かったのかわからんってことじゃ。
さあ‥‥これを、
諸君にわかるように教えてさしあげるだけの技量がワシにあるかどうか‥‥。
ない‥‥かもしれんが今回はそこまで踏みこまんので、
ワシの宿題にしておこう。
(ё_ё)

決算書の見方をダイエットに例えると?

では‥‥今日は最後に、
もっともっと基本的なところで、
貸借対照表損益計算書のわかりやすい話をパッパッとやっとく。
この2つの、どっちも大事な書類のうち、
どっちかっていうとどっちが大事か、
キミにわかるかな?
(急にエラそうにしゃべりだしてすまんがの。)
貸借対照表(BS)は、
ある時点(何年の何月末とか)における、
会社の財務状態を示すものだ。
貯金がいくらあって借金がいくら‥‥って書いてある。
損益計算書(PL)のほうは、
ある期間(何年何月から何月まで)における、
お金の出入りを示すもの。
いくら売っていくら払っていくら残ったか‥‥がわかる。
つまりPLなんて、
しょせん短い期間だけのことしか書いてないんで、
最近がんばってるかどうかはわかるけど、
長い人生トータルした結果としてけっきょくどーなん?
っていうのはBSのほうを見ないとわからないわけだ。
だったらなんとなく貸借対照表のほうが大事じゃね?
これをダイエットにたとえていうと、
(ダイエットにたとえなくてもいいかもしれないが、)
先月1か月であんたがどんだけ食べて運動して太ったか痩せたかが書いてあるのがPLで、
ほんでけっきょくいま何キロになったのかが書いてあるのがBSってわけ。
大事なとこやからもういっぺんいうで!!
  • ある期間で体重がどんだけ増えたか減ったか
  • 結果としていま何キロか

この2つが書いてある。
(もうこれ以上はカンタンに言えないから、
これでわからんかったら商売やめな。)

┐(-。-;)┌
ダイエットにたとえたついでに言うと、
会社が儲かってないときって、
数字を見るのがつくづくいやになるけど、
そこもダイエットと同じよね。
ダイエットが順調で体重がちょっとずつ減ってるときってのは、
今週は何キロ減ったか、今日は何グラム減ったか、
気になってしかたがないから何度も体重計に乗る。
そのときの達成感がたまらなかったりするわけよね。
ところがだんだんダイエットが苦痛になってきてサボりはじめると、
つい食べすぎたり飲みすぎたりで、
それが続くと体重計に乗るのがいやになる。
あーっ!
もうなーんも知りたくない見たくない!!
──って。
ま、
それといっしょだな。
経営者たる生き物、
悪い数字はとにかく目にしたくない。
なにもかも忘れたい。
だから仕事に没頭するふりして忘れようとしてるんだが、
そこんとこ、
身に覚えがあるはずだからわかってるよね。
だからってね、
数字に弱いのをそのままにしちゃあいけませんぜ。
ダイエットも経営も、
もうちょいがんばろうぜってことですワ ̄O ̄)ノ