松下幸之助なんか目指すな

人間関係は教科書どおりにはいきません。 たとえ血を分けた肉親であっても、愛せないものは愛せないし憎いものは憎い。 ウザい関係はスパッと切り落として逃げてください。 嫌いなものは嫌いでけっこう。 きれいごとの奴隷になる必要はありません。雲隠れです。


人間の道は排除の道ではない。お互いにタライのなかに相集うて暮らしているのである。押しやっても押しやれるものではない。だからいたずらにもがきあがくよりも、寄りそうもよし、寄りそわざるもよし、これも何かの縁と心を定めて、あるがままを承認し、あるがままに受け入れるほかない。そこにおのずから調和が生まれ、自他共に生きる道が、ムリなくひらけてくるのであろう。松下幸之助「続・道を開く」より

ウザいとかキライだとか許せねえとかいって、
人を避けたりシカトしたりイジメたり、
そういうの、
弱い人間のすることですよ。
みんなのこと好きにならなきゃね、
いけないのかもしれませんよ。
愛は無条件に。
だから、
人を選別するなんて、
そんな意識は捨てなきゃいけないもんなんです。
‥‥なんて、
宗教家じみたことを耳にすることがありますけど、
しかしそういうのはすべて、
あなたが未熟じゃなければ‥‥

話です。
嫌われる勇気が必要なのと同じように、
あなたにも、
そしてわたしにも、
人を嫌う勇気が必要だ。
いくつかの人間関係を、
切り落とす勇気です。
自分の成熟度と、
よく相談してくださいな。
無理は禁物。
部下をつぶすようなことをしたら、
もちろんリーダーとしては失格。
でもそれがあなたの、
いまの器のサイズだとしたら、
それもやむをえない。
リーダーなんか辞めちゃいなってことです。
相手がたとえ親であろうと子であろうと兄弟であろうと、
かつて愛しあった配偶者であろうと、
バッサリ斬って捨てる勇気をもってください。
自分のサイキを守るのが先だ
と、
わたしはアドバイスしたい。
あなたの心はまだ入門編でうろちょろしてる。
せいぜい初級か中級の下のレベルなんです。
上級の人がここに来たりしませんから。
介護に疲れたといって親を殺したり、
いじめられていることを黙ったまま自分を殺したり、
そこまで追いつめられるまえに、
早く逃げてください。
逃げるのは弱い人間の特権ですから、
きれいごと言ってる場合じゃないんですから、
生き死にのかかった話になるまえに、
あっかんべーして逃げましょう。
親は大切にしないといけないとか、
子どもには愛情を注ぐのはあたりまえとか、
動物としての本能だとか、
そんなのウソですから。
一般的な遺伝子を備えて生まれてきた人ばっかりじゃないんですから。
大多数の生き物がそうしているからといって、
それを相対的な尺度で正常と呼んでるだけですから。
朗らかに生き延びることが最優先なので、
義務も責任も放棄して逃げましょう。
リーダーになったからにはチームの面倒をみなくちゃいけません。
それがしんどいなら辞退するんです。
心がつぶれるほどキツいなら、
ゆがんでしまうまえに逃げましょう。
自分のカタチを守りましょう。
心が進級してからまた、
のこのこ戻ってきたらいいんです。
謝っても済まないかもしれませんけど、
いじめがエスカレートするだけかもしれませんけど、
ずっと恨まれ続けるかもしれませんけど、
当時はキャパを越えていたんだからしょうがないじゃないですか。
けっきょくのところ、
オレもあんたも生きてるだけで誰かに迷惑をかけてる
やっかい者にちがいない。
だったら何がいちばん迷惑にならないマシな選択か、
それを考えて立ち去ろう。
あんたなんかいないほうがマシってこと。
いなきゃ他の誰かが代わりにやらなきゃしょうがなくなって、
きっと公務員かどっかのいい人がやってくれる。
もうちょい喜ばれる場所を探して
移住しよう。
今日のわたしのアドバイスは、
すごくネガティブかもしれないけど、
それでもやっぱりこれで救われる人もいると信じる。
他の人に言ったことと正反対のことを、
あなたには言うかもしれない。
それはあなたの成熟度で変わる。
あなたがいま置かれているフェイズで変わる。
成長したいなら、
積極性を養いたいというのなら、
なるべく明るくて前向きな人たちとつきあったほうがいい。
自分と同じレベルの、
消極的な人たちとつるんでちゃいけない。
それはそのとおり。
でももし心が上級なら、
どんなに心が汚いやつを受け入れても平気でいられるのがほんとう。
清濁をあわせ呑む
ってことが
できるようになってるのがほんとう。
わかるけど、
それは中級コース以下のカリキュラムじゃない。
未熟者には無理なんだ。
泳ぎの練習を、
溺れ死ぬまでつづけるな。

へこたれて笑われる勇気をもとう。
笑われたら怒ろう。
休ませてくれと、
悔し泣きしながら頼め。
いっしょに頼んでやるから、
もう休め。
ネガティブな言い訳を並べるようだけど、
いまはそれでもいい。
挑戦をやめないで、
必ずまたしぶとく再開するんだからいい。
バーンと来たやつをサッとかわす。
ドーンと当たってくるやつをヒョイとよける。
わたしたちはその修行の途中です。
サッとかわせなくて当たってしまったら傷を負う、
ヒョイとよけきれなくて擦ってしまっただけで血が止まらない。
それが未熟者の悲しさ。
矛盾したことを言うようですが、
やり損なってばかりでヘトヘトになったなら、
いっぺん休んでください。
笑ったやつにはキレてください。
いきなり飛び級を狙うほうが
身のほど知らずだってことなんです。
欲張って上級へ進もうとせず、
基礎からやり直してください。
市長をやってるあいだは、
すごく市民に慕われて評価が高かったのに、
知事になったとたん議会のいいなりで何もできない政治家っているでしょ。
係長のときはよかったけど、
部長になってからは明らかにオーバーロードとかね。
┐(-。-;)┌
キクゾウさんのえらいとこは、
ちゃんと自分の器をわきまえてるってこと。
立ち位置を心得てる。
課題別に、
自分はいま初級だとか中級の上のほうだとか判別して、
イチビって背伸びしない。
マラソンも、
折りかえし地点と30キロ越えてからじゃあペース配分がちがうように、
いつでも全力を出し切りゃいいってもんじゃありません。
あなたが読んでいる人生教本には、
聖人君子になれと書いてありますか。
なりたいならなれるかもしれませんけど、
どうせ一足飛びにはなれません。
わたしは、
自分が聖人君子じゃないことを喜んでいるし、
そんなもんにはなりたくもない。
ナンバーワンも目指してない。
だからこの歳になってもこの程度の体たらくなんだよ
って
笑っていただいてけっこう。
でもわたしは何もあきらめてない。
一旦停止したらまたアクセル踏んでる。
だから大してスタミナないのにしぶとく完走できる。
わずかでも自分がもっと役に立てる場所が他にあるから、
そっちに行くだけ。
頼まれもしないのに、
オレの力でどうにかしてやろうなんて出しゃばらない。
あなたもわたしを見習って、
さようならをじょうずに使いましょう。
雲隠れ──
これは手に負えないなと悟ったら、
スッと姿をくらます。
So long!
バイバイです。
こいつは人間として腐りきってるとわかったら、
こっちに火の粉が飛んでくるなとわかったら、
スーッと離れる。
Adios!
さようなら。
タコが墨を出すみたいにいっぱい毒を吐いて、
出ていってもらうときもある。
Leave me alone.
お元気で。
‥‥
松下幸之助さんの
「道を開く」「続・道を開く」を読んだのは、
わたしがまだ中学生のときでした。
父が三洋電機の関係の仕事をさせてもらっていた工場をやってたので、
井植薫さんや後藤清一さんの著書も応接間の本棚に並んでました。
「叱り叱られの記」とかね。
モロに昭和な根性物語だったな。
わたしの実家は三洋電機発祥の地、
加西市北条町にあります。
三洋電機まで歩いて数分‥‥っていうか、
家の玄関を出たら右手に三洋電機の北条工場が見えてた。
いわゆる企業城下町で、
三洋電機に支えられて成り立っているような地域でしたから、
松下幸之助さんなんて、
親父にとってはまさに現人神のような存在だったかと思われます。
北条で三洋電機を創業した井植歳男って人は、
松下幸之助さんとともに松下電器を創業した人物でもあります。
余談ですが父は、
三洋電機の凋落を知らずに逝きました。
まさかもうこの世からSANYOブランドが消滅してるなんて知ったら、
天国と地獄がひっくり返るほど驚いて
あの世でまたショック死するんじゃないでしょうか。
松下幸之助さんや後藤清一さんの本は別に、
親父に読めと勧められたわけではありませんでしたが、
すごく大切そうに並べられてたので手にとって、
子どもながらに引きこまれた記憶があります。
>経営って、
>なんかすごいことなんやな。

って、
そのときはじめて経営ってもんに触れて感動したかも。
中味の細かいところは忘れましたが、
人間の道は排除の道ではない
ひとことは
ズブっと心に突き刺さったんです。
あいつはキライだ、こいつもムカつく
って、
排除ばっかりしてたからなんでしょうけど。
この世の中、いやなことはいっぱいあるし、自分にとっていやな人もたくさんいる。だから、ついそれらを向こうに押しやって、自分のまわりから遠ざけたいと思うのだが、一つ押しやっても、また新たな嫌なことが起こってくるし、押しやったと思ったいやな人が、知らぬまにまた自分のまわりに寄りそってくる。もがいてもあがいても、やっぱりもとのままである。松下幸之助「続・道を開く」より

──わかりやすい話です。
中学生のキクゾウ少年にもわかった。
心に染みてわかりました
けど、
それがしんどかったんですね。
まだ子どもですから。
いやなもんはいやなんですから。
いまでこそ、
それは心の防衛機能がはたらいているだけ
ってわかりますから、
自分を責めたりしませんけども。
愛しあうのも本能なら、
排除も本能。
だからあなたも、
心の防衛のために誰かを排除したからって、
自分を責めたりしないでください。
相手がたとえ肉親でも
です。
汚いヤツはいるもんです。
ぜんぶ口に入れてたら下痢するんです。
排除するか逃げる以外に、
心を防衛する手段を知らないのがふつうなんですから。
押しやって遠ざけるのがむずかしければ、
自分から逃げるしかない。
しんどい
っていう理由だけで、
逃げていい。
あっちは巧みに都合よく、
あんたを利用してるだけかもしれないんだから。
むこうのほうが一枚も二枚も上手なんだから、
苦しい理由の説明なんかいらない。
なんかおかしい気がするっていうだけでいい。
押してもだめなら引いてみな
って
昔っからよくいうじゃないですか。
恋愛だけじゃなく、
これは人間関係すべてについていえる極意ですよ。
排除するのは難しくても、
自分が立ち去るのは意外と簡単なんです。
いっそ存在を消してしまえ。
地球の果てまで逃げ延びるなんてこと、
できやしませんけど、
ほんのちょっとばかり時間稼ぎができたらいいんです。
つかまるまでのあいだに、
傷の痛みが癒せたらいい。
あなたがもし、
松下幸之助さんみたいに偉大な経営者になりたいとしてもですよ、
仮になれるとしてもですよ、
どうせ100年くらいかかりますよ。
だって相手は経営の神さまなんですから。
神さまなんか目指してどうするんですか。
そんなもん疲れるだけですよ。
孫正義だの柳井正だの、
雲の上ばっかり見上げてなんになるんですか。
あんたなんかしょせん
鼻くそみたいな存在ですよ。
これって、
目くそ鼻くそを笑うっていうんですけど、
わたしは自分がクソみたいな人間でよかったと思ってます。
のびしろが大きいって意味ですから。
オレもあんたもまだ本気出してないだけ。
すべては
神さまになれないあいだの過渡的な措置だと割り切って、
ぜんぶキャンセル
いっせえのーで排除です。
排除がだめなら逃亡です。
逃亡資金が必要ならわたしが用立ててもよろしいので、
命がけで逃げてください。
きっとそのうち、
押しやることも逃げることも必要なくなります。
誰とも何とも、
戦わなくてもよくなる。
‥‥
不埒な修行僧、
キクゾウさんの場合はどうか?
どうでしょう?
めったにないですよ、
放棄して逃げるなんてことは。
押しやるってことも、
いまはもうほとんどない。
めったにない、ほとんどないってことは、
ちょいちょいあるってことなんですけども。
キクゾウさんは、
いくつになっても心の中にガキがいて、
なめとったらしょうちせんでって粋がってますから。
自分や自分の身内が軽く扱われることを許しませんから、
こいつ許せないなと感じると、
どうにかしたら許せるとわかっていても、
やっぱり大人げなく許しませんから。
自分のそういうとこキライじゃないんで、
おとなしく順応してたほうが楽だと思える場面でも、
めんどくさくっても、
ちゃぶ台をひっくり返す自分を許してますから。
きちんと心の防衛機能がはたらく。
わたしについてる神さまは、
ずいぶん茶目っ気のある神さまらしくって、
ほんとうに許してもらえるんです。
旅の途中の、
無責任ななりゆきまかせで。
ケツをまくって逃げ出すんです。
はい、
さよならごめん
と(ё_ё)