セルフイメージを変えたいのに変えられない件

コンプレックスが大きすぎて、なりたい自分を描けない人が大勢います。 先にコンプレックスをどうにかしたくて、なりたい自分どころではないんですね。 変わることの背後にある恐怖に気づいておきましょう。 美しくてカッコいいセルフイメージを描いてください。


きのうまでツルツルのハゲ頭だった男が、
突然カツラをかぶって出かけるときの気分というのはどんなもんなんだろう?

って、
想像したことありますか。
その男は実は自分のハゲ頭のことをずっとひどく気にしていた。
にもかかわらず、
周囲に対しても自分自身に対しても彼は、
外見などまったく意に介さないというようなふりをしてきた。
彼にとって「カツラをかぶる」なんてことは
あまりにも女々しくてありえないことだった。
もてたいとか、若く見られたいとかいう欲求は
彼にとっては邪道、
これまでの主義主張に逆行するのです。
そんな彼がカツラで出勤したとしたら──
彼を見た人々は一様にあっけにとられ、
一斉にかげ口をきき始めるかもしれません。
くすくす笑い始める。
本人の目の前であからさまにプッと吹き出すものもいる。
そんなことをいろいろ想像しているうちにこの男は、
カツラをかぶる勇気を喪失してしまうんです。
だから、
ほんとうはハゲは彼にとってどうしようもなく大きなコンプレックスなんですけど、
とりあえず今日もハゲ頭のまま出勤してる。
どういう事情にせよ自分が嫌いで、
なんかかんかのコンプレックスを抱えて、
できればいまとちがうセルフイメージに変わりたいあなたは、
いわばこの男の立場と同じです。
(ё_ё)
芥川龍之介の「鼻」っていう短編小説、
読んだことありますか?
鼻が長いっていうコンプレックスに悩まされる男の話ですが、
このハゲ頭の男の話と重なるところがあります。
もしあなたに、
どうしても克服したいコンプレックスがあるなら、
知っておいたほうがいいストーリーの展開です。
ヒアルロン酸でオッパイを大きくするとか埋没法で二重まぶたにするとか、
コンプレックスの原因となっている外見的な箇所を整形するとしましょう。
成功裡に計画が進んだとすると、
あなたは、
「細長い腸詰めのような」鼻を小さくすることに成功した禅智内供と同じ立場です。
「内心では終始苦に病んで来た」にもかかわらず、
「表面では、今でもさほど気にならないような顔をしてすましている」ところまでそっくりです。
ところが、
長年の念願が叶って、
鼻が普通の人並に戻ったとたん、
内供は、
もういちど元の鼻に戻りたいと願うんです。
なんで?
さあ、
なんででしょう?
それはきちんと小説を読んで味わっていただくとして、
あなたはどうでしょうね?
もういちど元どおりペチャンコの胸に戻りたいと願うのでしょうか。
あなあたがふだんまわりに与えているイメージは、
明るくて快活でサバサバしてて、
コンプレックスなんかあるように見えないタイプですね。
外見にコンプレックスがある人ほど、
表面的には
ルックスなんか気にしないタイプを装う傾向が強いといいます。
あるコンプレックスについて、
「気にしている」と受けとめられるか「気にしていない」と受けとめられるか、
その受けとめられ方をあなたは「気にしている」んです。
今ではカツラの技術も進歩して、
誰にも気づかれないあいだに少しずつ増毛することができるそうな。
あなたも、
できることなら誰にも気づかれないあいだに生まれ変わってしまいたい
密かな欲求があるはず。
まわりが自分の「異変」に気づくことを、
内心ものすごく恐れているのではありませんか。
だから逆に、
若い女の子に多いパターンとして、
手術のまえにベラベラと宣伝して「見て!見て!」モードに入るんですね。
ここではわかりやすく外見的なコンプレックスを例に出しましたが、
内面的なことや性格でも同じです。
この恐怖に立ち向かう勇気はもっておいてください。
コンプレックスの原因箇所を整形して変えてしまうってことは、
逆に、
自分の弱点をさらけ出すことなんです。
物心ついて以来、
ずっとコンプレックスだったことがバレてしまうんです。
あなたが「いちばんうまくできなかったこと」が知られてしまう。
吃音(どもり)で悩んでいる人が、
じょうずにしゃべりたい一心でトレーニングを続け、
家族が相手のときはちゃんと話せるようになっても、
いざ外へ出て話そうとすると
トレーニング前よりよけい話せないということが起こります。
自分がいま、
必死でしゃべり方を矯正している事実を知られることが、
恥ずかしすぎて恐すぎて緊張してしまうからです。
このトラップを知っておいて、
うまく開き直ることが必要です。
「相手が変に思う」恐怖を逆手に取ることがヒントになります。
あえて自分がうしろめたいと感じることをするんですね。
「こいつは何を変なことをやっているんだろう?」とか
「何かたくらんでいるんじゃないのか?」と思われることを、
予期しながら行動できたときが、
新しいセルフイメージの導入に成功しつつあるシグナルです。
思い出すためのキューとなる行動は何でもよくて、
あなたが何かするたびに、
相手が首をかしげるような感じが正解です。
はじめに、
自分の欠陥を知られたくない気持ち。
次に、
その欠陥の存在を自分自身が気に病んでいることを知られたくない気持ち。
これが、
新しいセルフイメージの定着を拒むカベです。
やっぱり引き返そう

あなたが思うのは自然な反応なんです。
そんなあなたに魔法の呪文をひとつ。
>いま、
>それをやるのはヤバくない。

これをですね、
200回くらいくりかえして言ってみましょう。
マントラみたいなもんで、
こんどビビったら自然にこの声が聞こえてくるようになるくらい、
心に刻みこんでおくことです。
いまそれをやるのはぜんぜんヤバいことでもまずいことでもないのです。
長いことかかって念入りに考えたあげくの結論じゃないですか。
悲願じゃないですか。
いままでそのコンプレックスのせいで、
どれだけみじめな思いをしてきたんですか。
それがほんの少しの勇気で、
人生が変わるんじゃないですか。
ごまかされず、ごまかさず、
悔しかったことのすべてを思い出してください。
恨み辛みのすべてをこの呪文に詰め込むんです。
>いま、
>それをやるのはヤバくない。

すると、
ひとつ、またひとつ、
ダメだっていう感覚のカベが破れていきます。
そのカベを破ってみないとその向こうに何があるのか分からないでしょ?
いや、
そのカベの向こうには約束された幸福が待っていると知っているんでしょ?
自分が変われるか変われないか、
いま、その分かれめにあなたはいます。
自分が理想とするセルフイメージにくらべて
現実の自分が見劣りすると感じているうちは、
イメージどおりに行動すると「照れくさい」感じがするもんです。
これも知っておきましょう。
中身もないのにかっこだけつけているヤツって、
あなたのいちばん嫌いなタイプですよね。
ずっとコンプレックスを背負ってきたあなたは、
自分のようなコンプレックスがない人たちにやっぱり嫉妬してきました。
そんなときは自分に向かってこう言ってください。
>なに照れてんだよ、バーカ。
これも200回くらい練習してくださいナ。
冷やかしには冷やかしで応酬するんです。
キクゾウおじさんは、
これから何回でも生まれ変われる若いあなたたちに、
美しくカッコよくなってほしいです。
まだまだこれからいくらでも変われる、
そこを応援したい。
だから、
新しいセルフイメージの定着には時間がかかるってことを覚えといてください。
髪を切るだけならすぐですけど、
肥満が一日で解消したりしない以上に、
洗練された話し方や歩き方、
オーラのある立ち居振る舞いっていうのは時間がかかります。
正しいゴルフのスイングを
体に覚え込ませる過程にも似た一進一退をくりかえすことになるでしょう。
左腕が曲がってないか、肩が下がってないか、
腰が先に回っているか、手首が折れていないか、右の脇はしまっているか‥‥。
ちゃんとまっすぐボールを飛ばすためには
信じられないくらいいろいろな部分に少しずつ神経を配らなければいけない。
少なからずいらだちを伴うもんです。
うまくいく経験とうまくいかない経験を数え切れないくらいくりかえして、
学習を積む。
初心者のころは特に、
コンペが近いと毎日のように練習に出かけるでしょ。
このくらいの根気がないなら身についたりしませんよ。
長く練習を怠れば、
実戦でもうまくいかなくて当然。
それどころかまた元に戻ってしまう。
そんなにあっちこっちにいっぺんに神経を配ることなんかできるわけがないから、
ある程度は「体に覚え込ませる」必要があります。
切ったらオシマイの包茎手術とはわけがちがうんですね。
越えないといけないカベはいくつかあるでしょうけど、
なりたい自分

なってください。
どうにもできないコンプレックスはコンプレックスのままに、
それも宿命だと受け入れて、
どうにかできるコンプレックスはどうにか克服して、
そんなんもこんなんもぜんぶひっくるめて自分のことが大好きですと、
胸を張って断言できる大人になりましょう。
美しく、カッコよく、
ですね。