感情は抑えるな

病みつつある心に気づいていますか。 暗黒の抑うつ状態から抜け出られる人は、誰にどれだけ非難されても自分は自分だと居直れる人。自分のカタチを守れる人。 いま、不安と闘っているあなたに、キクゾウが32年前に出会ったジョージウエインバーグ氏のアドバイスを贈りましょう。 ──強い感情は抑えてはいけません。特に怒りは。

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Don’t suppress strong emotions,
especially anger.
from “SELF CREATION” by Dr. George Weinberg

自分のココロは自分で守ろう

なんとなく心が重くて暗いとき、
病みつつある自分

早めに感じ取ってください。
病んでしまってからでは、
ややこしいので。
 ̄O ̄)ノ
眠れてますか?
気持ちよく毎晩、
ストーンと眠りこけてますか。
眠れない時間を
働きすぎることでごまかしていませんか。
眠れてて食欲もあるなら
ひとまずOKなんでしょうけど。
相も変わらず、
病んでると思しき人が目につくものでして。
あの人もあの人も、
そして
>え、
>あなたもですか‥

って。
自分がめちゃめちゃ健康だとは思ってないんですけど、
病みつつある人たちに、
少しはわたしを見習いなさいと言いたくなるポイントがあります。
それは、
感情を抑えすぎていませんか
ってとこ。
感情を抑えるのがあたりまえの習慣になっていて、
それを良しとしてないか。
心の病の、
めちゃめちゃありがちな原因なんです。
感情を抑えずにそのまま出すなんて非常識だ

考えている人がいっぱいいるくらいですから。
たとえば、
レストランでオーダーがまちがっているとかサービスが悪いとか、
腹を立てて店員さんにキャンキャンわめきたてている人、
よく見かけますけども、
あれってみっともないですよね。
ヒステリックに声を荒げて、
わめいたり、どなったり‥‥、
ほんと、
ブサイクです。
これほど醜いことはないとさえ感じます。
そこは確かにそうなので、
激しく同意しますけど。
だからといって抑えつけてしまうんですか?
そこにメラメラと燃えたままの怒りや憎悪があるのに、
みっともないからって、
飲みこんで溜めてしまう。
そりゃ病気になりますよ。

怒りをむきだしにする勇気を

感情を抑えることが習慣になっているあなたは、
親の立場あるいは上司の立場で、
感情の扱い方について
どんな教え方をされているのでしょうか。
わたしはもちろん、
感情は抑えないように教えたいのですが、
なかなか真意が伝わらないので、
その詳しい説明に入るまえに、
わたし自身の体験を話しましょう。
ずいぶんむかしの話なので、
細かいところは思い出せないんですが、
>感情は抑えたらだめなんや!

確信したきっかけは、
はっきりしてるんです。
いまからちょうど
32年もまえに出会ったある本に書いてあったひとことが
グッサリ刺さったからなんです。
それが冒頭にも引用した
Don’t suppress strong emotions,
especially anger.
from “SELF CREATION” by Dr. George Weinberg

強い感情は抑えてはいけません。
特に怒りは
(キクゾウ訳)
です。
本のことはまたあとで述べますが、
こんなわたしにも、
自分をものすごく抑圧していた時期がありました。
気が短くキレやすいことにかけては、
西日本でも五本の指に入るくらいのわたしですから、
さすがに自分の怒りを野放しにはできず、
なんぼアホでもそれなりの自制心がはたらいたってことでしょうか?
だれかれかまわず悪態をつく自分自身の醜さに
ほとほと嫌気が差して反省した

‥‥から
ではありません。
ふつうのことだったんです。
高校時代のことでして、
けんかしたら叱られる。
大きな声を出したら叱られる。
汚い言葉を使ったら叱られる。
親にも叱られるし先生にも叱られる。
感情は抑えないといけないもの
っていうのは
ふつうのことだったんです。
怒っちゃだめなんだっていう空気は、
あたりまえのように自分を取り囲んでいたんです。
中でもいちばんこたえたのは、
女の子に怖がられて避けられるようになっていた現実だったんですけど。
怒りを抑えるようになって、
ますます目つきも雰囲気も悪くなってたんですが、
当時はそんなことに気がつきませんから、
さらに心の奥底のほうへ怒りを押しこむようになりました。
スーパー短気で怒りっぽい人間が、
怒りを抑えこんでしまうと、
心はどんどん病んでいきます。
何年もかけてじわじわと、
全身にがまわるみたいでした。
そんな折に教則本のような一冊に出会い、
中にこの一節があったのです。
Don’t suppress strong emotions, especially anger. You spend hours shopping and cooking dinner for your friend, who cancels at the last minute; tell her that you’re annoyed. Don’t say, “Oh, it was no trouble.” It was trouble. Resigning yourself to mistreatment makes you believe you deserve mistreatment—and that youa’ll always get it.from “SELF CREATION” by Dr. George Weinberg

強い感情を抑えてはいけません。特に怒りを。あなたは友だちのために何時間もかけてお買い物をして夕食をつくってあげました。なのに彼女は約束をドタキャンしたとします。こんなとき、きちんと彼女に不愉快だと告げるんです。「だいじょうぶよ、気にしないで」なんて言わないでください。だいじょうぶじゃないじゃないですか。ひどい扱いを受けて、それを我慢していると、自分がひどい扱いを受けるにふさわしいと思えてきてしまいます。その結果、いつもそんな扱いを受けるようになるんです(キクゾウ訳)
キクゾウ少年、
ちょうど二十歳。
病みつつあった心に、
グサッ突き刺さるアドバイスでした。
変な話ですけど、
オレはもっと怒ろう
とさえ思いました。
人の何倍も気が短くて怒りっぽいくせに、
怒らない人間を無理して演じていたら、
自分らしさを見失うのは当然のこと。
てきめんに抑うつ状態に陥ってましたから、
なんせそこから抜け出たかった。
とはいえ、
加減ができない不器用な男ですから、
それから何年ものあいだ、
かなり危ない橋を渡り続けることになります。
エモーショナルな意味で、
ですね。

もっと怒ってみませんか?あなたも

感情を抑えずストレートに出すことには、
もちろんデメリットもあります。
ホンネとタテマエを、
器用に使い分けるのがオトナ
ってもん。
どころが、
まっすぐすぎたキクゾウ少年はホンネ100%
20代、30代は、
喜怒哀楽全開の危険な青春となりました。
売られたケンカはすべて高値で買い取り、
誰とでもガチャガチャ衝突し、
そこらじゅうで軋轢を生み、
まとまる話もブチ壊してまわりました。
全宇宙を敵にまわす
っていうのは、
当の本人にとっては大げさでも誇張でもなんでもない。
雨が降っても風が吹いても腹が立つ。
誰も信じてないし、
誰にも頼りたくないんだから、
人間関係は全壊
中でも水と油なのが、
感情の起伏が貧弱だとしか思えない、
公務員によくあるタイプの人。
そういう人の大半は、
こっちがなんでカリカリしているか理解できないもんだから、
眉をしかめてあからさまに嫌悪感をあらわします。
侮蔑の表情を浮かべて見下げている。
そのせいでこっちはよけい逆上することになるわけですから、
喜怒哀楽の薄っぺらいそういう連中とは
ことごとく噛みあわず敵対します。
──こんな、
怒りまくりの生き方が、
実は青春時代だけで終わらず、
40歳をすぎるまで続いてたんですから、
われながら呆れ果てますよね。
‥‥
で、も、
ですよ、
そ、れ、で、も、な、お、ですよ、
感情を抑えて生きるよりはマシなんじゃないの
と、
わたしは言いたいんです。
自分の感情を抑えずに吐き出すっていうのは、
確かにかなり危険です。
でも、
吐き出さないまま大人になって老いていくのは、
もしかしたらもっと危険かもしれない。
ほんとうは憎んでいる相手に対して、
憎しみをあらわさず、
ぼんやりごまかしているうちに病んでいくあなた。
ウソをついているのと同じですよね。
嫌いな相手に
>好きよ
っていうほどわかりやすいウソじゃなくても、
嫌いだと伝えないだけでウソなんです。
やさしさから出たウソならけっこうだとしても、
そのウソはどうですか。
嫌いな相手に嫌いだと伝えない、
その動機はどんなものですか?
嫌いと伝えたら相手が怒るか傷つくか、
どっちにしろそれで自分も嫌われて関係がこじれる。
そんなの面倒だし、
いろいろ不都合もあるし‥‥
ってことで、
自分の感情をごまかして抑えておくのがいちばん無難‥‥
なのかもしれませんけど、
抑えられた心のほうは気の毒ですよ。
あほらしくなってストライキ突入、
感じることを放棄するでしょうね。
ε=( ̄。 ̄;)

自分を好きになれたらいいですよ

この原稿を書くために、
また Self Creation を引っぱり出してきました。
すっかり黄ばんでしまって、
ぼろぼろです。
邦訳書「自己創造の原則」は、
もう日本では絶版になってると思っていたんですが、
今回あれこれ調べているうちに、
「自分が『たまらないほど好き』になる本~『自己創造』の絶対ルール」

ていう別のタイトルで、
中味の日本語訳もかなりイマドキ風にやさしくなって、
まだ出版が続いていることがわかりました。
たまらないほど好き(*^_^*)
だなんて、
中味の重さにくらべて、
なんだか軽いノリだなぁ~
とは
思いますが、
それでひとりでも多くの若い人が手に取ってくれることになるのなら、
けっこうなことだと思います。
たまらないほど‥‥
かどうかは別として、
自分を好きになるのはほんとうです。
わたしなんてもう、
いまじゃ自分にラ~ブラブ、
好きで好きでしょうがない。
>めちゃめちゃおもろいやっちゃなぁ~!
>最高やんけ、
>オレ!

ってな感じ。
わたしはわたしが大好きで、
おまけにとっても信頼してるんですよね。
危ない橋を渡ってしまったことになるんでしょうけど、
全宇宙を敵にまわして戦争やってた感覚のさなかにあっても、
嫌いだった自分を好きになっていく実感があった。
だから全宇宙とでも戦えた。
殴られても叱られても批判されても、
想定範囲内だったし、
それが正解だっていう確信があったから、
ぜんぜん平気。
無傷
むしろどんどん自分のカタチを取り戻せている感覚で、
痛いことも痒いこともないっていうか。
まわりの100人が100人とも敵だとしても、
自分だけは自分の味方をしてる。
どんなことがあっても
自分が自分の味方をしている。

この感じがしっかりつかめた。
うれしいこととして味わっていた。
そうすると次の段階、
99人から嫌われて憎まれて叩かれていても、
たったひとり、
自分を好きになってくれる人があらわれます。
他人からの嫌われ方が激しければ激しいほど、
味方になってくれる人の気持ちが鮮明にわかります。
自分が自分のことを好きになったことに理由があるように、
その人が自分のことを好きになってくれたことにも理由がある。
──実感できる理由。
100人に好かれようとして、
60人か70人くらいにまあまあ好かれていたころより、
たったひとりに好かれているその実感のほうが、
よほど強烈。
しみじみうれしい。
やがて味方は2人になり、
3人になり、
何年かしたら半分以上が味方になってくれていることに気づきます。
さあ‥‥
敵はあと何人残っているんでしょう?
どうでもええですわ、
そんなこと。
誰かがどっかでものすごくわたしを批判しているとしても、
いまでもそこは平気なんだな。
いわゆる
打たれ強さ
みたいなもんが、
そういうところで養われたと思うんです。
いまとなってふりかえれば、
ストレートに怒ってきてよかった。
それで他人にどう思われてもしかたがない、
オレはオレだと居直れたことがほんとうによかった。
さ、
どうしますか。
これはあなたの選択です。
感情を抑えない
っていう意思決定を下すのは
あなたなんです。
(ё_ё)

怒りっぽいのは怒ってないから?

もしあなたが
感情を抑えない
ほうを
選んだとすると、
抑えなかった感情の適切な取り扱い方法は──
きちんと伝える

消してしまう

2つにひとつです。
いちばん不適切でやめてほしい取り扱いは、
発散する
ってやつですね。
ナマ身の第三者に陰口を叩くならまだしも、
ブログに書いたり2chに投稿したりLINEで流したり、
実在の見えない相手に向かってうやむやに放出してごまかしてしまうっていう‥‥
ITの功罪

大いに問われるところでもありますが、
こんなんが増えてるんですよね。
感情を伝えるなら、
しかるべき相手にしかるべきタイミングで、
きちんと伝えるために最大限の努力をすべき。
面と向かって伝えるのがいつでもベストとはかぎらないでしょうし、
電話とか手紙のほうがふさわしいこともあるでしょう。
本人に言いにくいことを、
親友にことづけることもある。
しかしそこでいちばん大切なのは、
肌と肌がふれあう感じ
だ。
そんな状況をつくるのには勇気がいる。
発散する
とは、
伝えることから逃げること。
姑息なツールを使ってそこから遠ざかるな。
感情は、
きちんと伝えるにしても消してしまうにしても、
どちらも相当なスキルが必要で、
いっぱい練習しないといけません。
わたしはかつて、
自分が怒りっぽいのは、
じゅうぶん怒ってないから
じゃないのか?

疑ったことがあります。
で、
もっと怒ろうとして、
まわりにさんざん迷惑をかける結果となってしまいましたが、
この仮説の半分は当たってました。
怒ってないから怒りっぽい
──このパラドキシカルなカラクリを
あなたも疑ってみてください。
ふだんあなたが、
キャンキャンわめきちらしている原因は、
実はあなたがほんとうに怒っている原因とは別物なのかもしれないと。
もうひとつ別の種類の怒りが、
あなたの内側深くに潜んでいるんじゃないのかと。
あなたは怒るように仕向けられているが、
実際には怒り切れていない。
どこにも持って行き場のない怒りが鬱積していて、
つまり蒸気が溜まっていて、
ちょっとしたきっかけでそれが噴出する状態になってはいるが、
それは全体の量からみるとほんのわずかであって、
怒りの本体は元の姿のまま奥のほうに隠蔽されている。
すなわち
ターゲットが狂っている
だとすれば、
わめいても、どなっても、
あなたの怒りがおさまることはないでしょう。
いま、
目の前に突っ立っている馬鹿者をひとり撃退したところで、
あなたの怒りの色や大きさが変わることはないのです。
だって、
相手をまちがっているんですからな。
あなたが怒っている真の原因は、
いまヘラヘラ笑いながら言い訳を並べているその馬鹿者にはないんです。
さっき電話でしゃべった馬鹿者にもない。
あなたがキレた現場をいくら調べても、
本当の動機はわからない。
あなたはいつでも怒っていますが、
怒っている理由がわかっていない。
あなたを怒らせている真の犯人は別にいる──
と、
いままでそんな考え方をしたことがありますか。
ないとすれば、
その犯人を見つけるために、
もっと激しく怒り狂うことが必要なのかもしれません。
オレを怒らせているのは誰なんだと、
怒りの矛先を次から次へと、
かたっぱしから突きつけていく。
連続殺人鬼(と呼ばれている人)の心理も
これと同じようなものなのかもしれません。
わたしはこれを、
心と頭の中でやっただけなので、
誰も殺していませんが、
言葉で傷つけた相手の数は相当なもの。
刑事罰はありませんが
カルマの罰は受けました。
このリスクはあなたも承知していてください。
絶望的に不器用だったわたしは、
神の思し召しで
感情を消す
っていう
ウルトラC級の手段に出会うしかなかったんでしょう。
そこまでひどくないあなたは、
伝える手段さえ磨いていただければだいじょうぶ。
しかるべき相手に、
きちんと伝える。
感情的にならずに感情を伝える
っていうテーマに、
クソ真剣に取り組んでいただきたい。

腹が立つ人たちとどう向きあうか

実は Self Creation には、
“How to Deal with Infuriating People”(腹の立つ人たちとの関わり方)

“How to Make a Complaint”(不快感の伝え方)
“How to Take Criticism”(批判の受け止め方)
といった章があり、
かなりのページを割いて実践的かつ懇切丁寧に
「気分の悪い他人たち」に対するHow To Doが示されています。
またまた長すぎる引用になってしまいますが、
わたしの気持ちとしては、
全文を翻訳して細大もらさずご紹介したいくらいなので、
せめて
不快感の伝え方についての小見出しだけでも。
  1. Complain to the person you think is harming you, and not to anyone else.
  2. Try not to object to your mate’s behavior in front of anyone else.
  3. Don’t compare the person’s behavior with that of other people.
  4. Make your complaint as soon as you can;
    that is, as soon as you’re alone with the other person and can articulate it.
  5. Don’t repeat a point once you’ve made it
    and the other person has carefully considered it.
  6. Object only to actions that the other person can change.
  7. Make your complaints vocally, not facially.
  8. Try to make only one complaint at a time.
  9. Don’t preface your complaint.
  10. Don’t aplogize to your complaint after making it.
  11. Avoid sarcasm.
  12. Don’t ask people why they’re doing something to which you object.
    Ask them to stop, if that is the underlying idea you wish to express.
  13. Rehearse your presentation if you need to.
  14. Don’t talk about other people’s motivations when objecting to an activity.
  15. Avoid words like always and never;
    they cotain implicit references to the past.
  16. If you never compliment the other person,
    don’t expect him to remain open to your criticisms.

怒りを感じたら、
表現のしかたに気をつけましょう。
>不愉快だ。

伝えること。
できれば1対1で、
できるだけ早いタイミングで。
顔で言わずに、
声に出して。
必要ならあらかじめ伝え方の練習もして。
ゆっくりと親切な態度で。
いまにも飛び散ろうとする感情のうねりの中にあっても、
常に冷静であること。
心の落ちつき

模索してください。
感情的になって
>チクショウバカヤロー!
と罵ったなら、
それは混乱を深めるだけですから。
感情を抑えないってことは、
キレることとはぜんぜんちがいます。
なんです。
抑えてきたものが爆発するから、
キレたり暴力事件が起こったりするんです。
さすがに、
感情の消し方を子どもに教えるのはむずかしいでしょうけど、
きちんと伝えることなら教えられます。
感情を抑えることのかわりに、
ですね。