怒らない経営‥‥ではまだ不十分だ

ぶらっと本屋さんに寄ったら大藪崇っていう若い社長の書いた「怒らない経営」が目に留まる。 自分自身、何年も心がけている課題だったので、タイトルだけで購入。 中味は想像とはちがったが、「すべて自分の責任」ていう姿勢が響いた。 自己責任を徹底すれば、心が不機嫌になることもないって教えだ。

すべて自分の責任

ぶらっと本屋さんに寄ったら
大藪崇っていう若い社長の書いた
「怒らない経営」

目に留まった。
出たばっかりの新刊。
怒らない経営‥‥ね、
それならわたしも常日ごろから心がけているど真ん中の課題なので、
タイトルだけで買ってしまう。
さぞかし気の短いイケイケの社長が、
怒りっぽい性格のために幹部と何度も衝突し、
組織はバラバラで崩壊寸前の危機を迎えるが、
その後、
怒りをコントロールする術を身につけて、
いまは業績も奇跡のV字回復‥‥
みたいなストーリーかな、

思ったが‥‥
ぜんぜんちがった(-“”-;)
この人、
子どものころからほとんど怒ることがなかったそうな。
で、
うまくいかないことがあっても
頭に血が上ってカッとすることもなく、
いまでも怒らない、と。
なんやねんそれ‥‥
怒るでしかし!
‥‥っていうのは冗談として、
どうすれば怒らずにいられるか
とか
怒ることがどれだけ人生にマイナスか
みたいなことは
書いてないから、
そういう意味では参考にならなかったし、
別にこんなタイトルでなくてもよかったやんかと思うけど、
もちろん響いた部分もある。
>すべて自分の責任
ていう姿勢が、
すごく強調されてる。
すべて自己責任
だから
何があっても人のせいにしない
ので
社員に対しても感情的にならない

怒ることもない
っていう
筋立て。
とってつけたような編集者の意図が透けて見えるけど、
でもこのことは大切。
1500円(+税)以上の価値はあるとしよう。

感情的な人が淘汰される時代

>すべて自分の責任
──そんな理屈はわかってても、
しつこくどうしようもなく湧いてくるのが怒りなので、
生まれつき短気で怒りん坊なわたしやあなたは、
引っ込みがつかない気分になってるでしょうけども。
いい機会なんだから、
あらためて自分に問いかけてみましょう。
>すべて自分の責任
と、
ほんとうに言い切れるあなたかどうか。
本の冒頭で、
著者はこう書いてます。
 うまくいくときも、そうでないときもすべて自分の責任だ。
 私はこれまでずっとそう意識してきた。結果が出なければ、何も残らないのだから、すべてを自分の責任としていかないとやり切れない。自分の責任という考えが体のすみずみまで染み込んでいる。そして、これまで取り組んできたすべてのことのベースになっている。大藪崇「怒らない経営」より

どうです?
生まれつき短気だったかどうかは別として、
自分の責任に関して、
あなたはそこまで言い切れるか。
ちなみに
大藪崇さんっていうのは1979年生まれ。
てことは35歳。
愛媛でエイトワンっていう会社を経営されてますが、
世代的にこのへんから下の若い経営者は、
怒らない人が珍しくなくなりました。
クールでスマートじゃなきゃ格好よくないし、
社員がついていかない。
平和な世の中が長く続いて、
感情的な人は時代に弾き飛ばされてしまうムード。
だからこの本のタイトルの「怒らない」ってとこよりも、
学生時代はパチンコ三昧で1000万円プラスで、
そのうち350万円を貯金にまわした話

とか、
ニートの時代に株式投資をはじめてから4年半で
35万円の資金を15億円に増やした話


反応して買ってしまう若者のほうが多いってことでしょう。
「怒らない経営」
っていうタイトルの本は、
これとは別にもう1冊ある。
「銀のさら」ブランドでおなじみ、
株式会社ライドオン・エクスプレスの社長、
江見朗さんって方が書かれた本。
ライドオン・エクスプレスの
企業理念──
ビジネスを通じ、相手の幸せが
自らの喜びと感ずる境地を目指す

経営指針──
感謝の気持ちに基づき衆知を集め、
すべてを容認し、自他共に正しく導く

──と。
これ、
いいですよね。
江見朗社長は1960年の生まれで歳も近いし、
天風哲学にもどっぷり浸られたなので、
感性としてはこちらのほうがフィットする。
ご本人にお会いしたことはないし、
「銀のさら」のお寿司も実は食べたことないので、
それ以上のことが語れなくて残念ですが‥‥

好きなようにやってくれたらいい

自己責任に話を戻そう。
わたし自身、
全責任は自分っていう姿勢を
あらためて徹底したい。
社員の仕事ぶりに対して不満があったり、
ミスや失敗で不愉快な気分になったりしているうちは、
まだ自己責任を取ってないんだ。
社員がそれぞれのゆっくりしたペースで快適に歩いてても、
会社としては利益が出るからだいじょうぶ。
と、
そんなしくみをつくるのが経営者の仕事だろ。
そこに責任があるだろ。
たとえば
社員がだらだら仕事してるのが目に入ったとしても、
ぼんやり手を止めてサボっていたとしても、
怒らない。
不機嫌にすらならない。
社員のほうの事情がどうであっても、
じゅうぶん利益の出る「しくみ」をつくるのが経営者の責任。

そこまで徹底したい。
社員さんだっていつもサボっているわけじゃないし、
なんか事情があるにちがいないんだから、
マイペースで働いてくれていい。
積極的に給料を上げてやるようなことまでしなくていいけど。
手抜きぶりが目に余るとしても、
それは、
経営理念を浸透させられなかった経営者の責任。
誰のせいでもなく、
すべてはわたしの責任。
そこで感情的になるってことは、
社員のほうへ意識が向いてしまっているってこと。
つまり、
経営者がつくるべき「しくみ」のほうへは意識が向いていないってこと。
意識を社員のほうへ向けて不機嫌になってるってことは、
自分の責任を脇へ置いているわけで、
肝心の「しくみ」が磨かれない。
悪いのは社員のほうだ

あからさまに考えているつもりはなくっても、
価値観の根っこに染みついてしまっているから不機嫌になる。
それでは本質的な問題解決が遅れる。
社員は社員のほうで、
それぞれベストを尽くして楽しくやってくれていると信じよう。
好きなようにやってくれたらいい。
社員に対して、
ああしろこうしろ、
どういうふうでなければダメだ、
といった感覚をもつのはやめにしたい。
怒るなんて問題外。
怒ってるつもりじゃなければ許されるなんていうのも甘すぎで、
不機嫌になることすら許容範囲外。
ごきげんずくめの経営
を、
さっそく
たったいまから実践だ。