「いじめ」が身近に感じられた日

愛するわが子が「いじめ」にあっていると知ったらどうしますか。 真っ先に「いじめ」をやめさせることを考えるでしょうか。 わが子を「守る」ために、あらゆる手立てを尽くすでしょうか。 そのまえに、強い子になってほしいとは思いませんか。 わが子を「鍛える」発想はありませんか。


メディアを通じて毎日のように見聞きしていながら、
ぜんぜん自分とは関係がないことのように思っていた「いじめ」の問題が、
急に身近なものに感じられたのは、
小学校4年になる娘のナツハ(仮名)から、
クラスでいじめられている子がいる
という話を聞いたときです。
>△△ちゃんも××ちゃんもな、
>江利菜ちゃん(仮名)にいじわるしてんねん。
>なんにも悪いことしてないのにな、
>江利菜ちゃんといっしょに遊んだだけでな、
>遊んだ子までいじめられんねん。

ナツハは、
どうしたらいいかわからず、
戸惑っている様子でした。
──え?そうなん?
えっと‥‥
江利菜ちゃんって誰やったっけ?
まえにも聞いたことあったかな?
こういうときは何て言えばいいんだろうか?

──ふだん頭の中が圧倒的に仕事のことばっかりで、
あまり子どもたちのことに気がまわっていないことをちょびっと反省。
ウチの子がいじめているわけではないし、
いじめられているっていう話でもないんだが、
なんだかつらそうだ。
きけば、
ほんとうに江利菜ちゃんにはどこも悪くない。
いじめにはちがいないが、
暴力を振るうというようなレベルではなく、
女の子どうしのあいだで仲間はずれにするっていうみたいな、
よくある文字どおりの「いじわる」
>そうかぁ。
>江利菜ちゃん、たいへんやな。
>誰にでも好きになれる相手となられへん相手があって、
>ムカつくやつはムカつくしな、
>それって大人でもなかなかむずかしい問題やねん。
>だいじょうぶや。
>パパがな、ちゃんとやっとくから、
>江利菜ちゃんも強い子やから、
>がんばれると思うわ。
>教えてくれてありがとう。

ひとまず娘を安心させたくてそんなふうに言いましたけど、
でも実際には、
わたしが何かするなんてことはない。
江利菜ちゃんが乗り越えてくれることを祈るくらいです。
いちおう妻に事情をきいてみたところ、
ママ友たちのあいだでは話題に上ってはいるものの、
それほど悪質じゃないし、
学校を相手に行動を起こすところまでは進んでないらしい。
担任の先生は状況を把握しているはずだとのこと。
ママ友たちは子どもに何て言ってるんだときくと、
そういう問題には関わらせない
というのが共通の了解になっているらしい。
要するに、
見て見ぬふりをしましょうっていうことのようでもある。
たとえばクラスで誰かが暴れているとか、
友だちどうしがケンカをしていたとしても、
口出ししたり止めようとしてはいけない空気なのだとか。
うーん、なんか違和感があるが、
それもしかたがないのかもしれない。
ケンカを見たら止めなさいと、
もし学校が指導していたとして、
実際に止めに入った子どもがケガでもしたら、
学校の責任問題になりますもんね。
親が黙っちゃいません。
>いじめられている子がいたら助けましょう
なんて、
たとえオモテ向きには正当な道徳だとしても、
教育の現場では通用しない。
いじめられっ子を助けたために、
自分の子がいじめられることになったら困るっていうのが親の本音だ。
じゃあせめて、
助けなくてもいいから先生には知らせてねっていうことにしたとしても、
告げ口だけはしなさいって言われてるみたいで子どもの気持ちはすっきりしない。
たいへんよね ┐(-。-;)┌
ちなみにウチの娘は、
いじめられるようなキャラではない(たぶん?)ので、
いままでいじめについて無頓着すぎたのかもしれませんが、
一昨年、こんなことがありました。
琴美ちゃん(仮名)っていう、
ナツハが親友だと思って仲良くしていた女の子のお母さんから、
ウチの妻に、
>ナツハちゃんが、
>うちの娘とあまり親しくされるのは困ります。


言ってきたらしい。
だからもういっしょに遊ばないでほしいと。
‥‥?
はぁ??
意味がわかりません。
ママ友ネットワークからのクチコミ情報を総合すると、
ナツハが琴美ちゃんとばかり仲良くするので、
別のお友だちが「仲間はずれにされた」と感じてしまい、
そこのお母さんが琴美ちゃんのお母さんに苦情を入れた──
という経緯のようだった。
ナツハと琴美ちゃんが仲良くしていたこと自体には問題ないはずなのに、
親の思惑によっていっしょに遊べなくなったしまったという流れ。
なにそれ!?
って、
オヤジ脳ではぜんぜん理解できませんが、
妻は特に動揺した様子もなく、
ああまたか‥‥って感じ。
かといって娘に、
>あの子とはもうつきあわないように。
みたいなことを露骨に言うわけにはいきませんので、
>ミドリちゃんがさあ、
>ナッちゃんといっしょに学校行きたいって、
>ミドリちゃんのママに頼まれたんだよね。
>いっぱい友だちいるんだけど、
>ミドリちゃん、ああ見えて寂しがり屋さんなんだって。

‥‥みたいな
まわりくどいことに。
ほんとうはミドリちゃんは別に寂しがってないんだけど、
ウチのママ友たちが仕組んで、
そういうストーリーを作った。
娘にしてみれば、
ある日とつぜん親友がひとり消えてしまったような感覚。
ちょっと悲しい。
でも、
こんな小さな(?)出来事は日常茶飯事。
いじめられているわけではないが、
一時期、
実はナツハがクラスで某男子生徒からかなりしつこくいやがらせを受けていたらしい‥‥
なんてことをあとで聞かされたこともあります。
話はそれますが、
ママ友ネットワークって、
あなどれませんよ。
だれとだれがどうでこうで、
どこの親がどんなんでどこの子がこんなんで‥‥
って、
身の毛もよだつ戦慄の諜報活動。
子どもがいじめのターゲットにされる原因の9割は、
実は空気の読めない母親がつくってるんじゃないかって思うくらい。
教育現場を事実上統治しているアンタッチャブルな勢力ですから、
警察も学校の先生もアテになりません。
男社会とは異質すぎてわからん‥‥で、
済ましていいのかどうかもわかりません。
他にも、
親が知らないだけで、
子どもなりにつらいことっていっぱいあるんでしょうね。
でも、
あえて言いますけど、
それがどうした
って話ですよ。
親として、
なにを子どもに伝えたいか。

愛するわが子がいじめにあってるって知ったら、
そりゃ心が掻き乱されますけど、
そこであなたはどうしますか?
真っ先にいじめをやめさせることを考えるでしょうか?
わが子を「守る」ために、
あらゆる手立てを尽くすでしょうか。
すぐさま学校に乗りこんで行きます?
血相変えて、
いじめてる相手の親にクレーム言います?
もちろんそれも必要でしょう。
子どもがよっぽど追いつめられているならね、
そういうこともやむをえないかもしれません。
いてもたってもいられないっていう気持ち、
わかります。
わが子を守りたいっていう本能的な衝動は、
やはり母親のほうが父親の何倍も強いのかもしれません。
でもそのまえに、
強い人間になってほしいとは思いませんか?
わが子を「鍛える」って発想はありませんか。
え?
いじめをなくすほうが大事に決まってる?
あ、
そうですよね、やっぱり。
でもどうもわたしには、
わが子を鍛えたいっていう衝動が、
よその親御さんより強いみたいなんです。
いじめられても、
それを平然と受け流せる子に育ってほしいと願ってしまいます。
だからもし、
わが子がいじめられて泣いて帰ってきたとしても、
>誰にやられた?
>たたかれたのか?
>痛いか?
>そうか、かわいそうにな。
>うわっ、
>青くなって腫れているじゃないか。
>そうだよな、おまえは悪くないよな。
>ちきしょう、なんてひどいことしやがるんだ。
>よし、
>二度とこんなことにならないように、
>パパが先生に言っといてやるからな。

‥‥とはならない。
>いつまでもめそめそすんなよ。
>あるよ、そういうことは。
>大人になったらもっと増えるかもしれないぞ。
>たたかれて悔しいのはわかるよ。
>うん、わかる。
>そりゃ悔しいよな。
>だからって泣いてたんじゃ、
>パパみたいにかっこいい大人になれないんだぞ。

ってな具合だろうと思う。
(いまのところウチの子は2人とも、
わたしのことをワイルドでかっこいいオヤジと思ってくれてるみたいなんで。)
わが子を育てるっていう偉大な営みにおいて、
守る鍛えるのバランスについて、
いちどゆっくり整理してみましょうか。
わたしが子どもに教えたいことの第一番は、
心を強くする方法
なんです。
いい大学に入ってほしいとか
安定した会社に就職してほしいとか、
そういう希望は、特にありません。
公務員になりたがるくらいだったら、
わたしの会社を継いでほしいです(ё_ё)
子どもに金銭的な意味での財産を残してやりたいとも思ってません。
金そのものを残すより金の稼ぎ方を教えたいし、
お金で苦労することがあったとしても、
そこから人生を学ぶ姿勢を教えたい。
お金がなかろうと、病があろうと、
あるいは物騒な事故や事件に巻きこまれようと、
あらゆる外からの刺激に対して、
いちいち怒りや恐れや悲しみといった感情に振りまわされることなく、
スーッとかわして引きずりもせず、
颯爽と超えていくような、
そんなたくましさを体得してほしい。
それさえあれば、
あとはなにがあろうが、
たとえ天地がひっくり返ろうが別にどうということはない。
父親として、
自分の背中に語らせたいことがあるとすれば、そこ。
(ΦωΦ)
わが子に対してさえそんな調子だから、
わたしは社員にも厳しいんです。
特に、特に、
めそめそうじうじ、すぐ泣くタイプの社員とか、
ここ一番ていうときに、こそこそ逃げ出すタイプの社員には
めっぽう厳しい。
守る 鍛える

かたよりすぎているという意味で、
確かにバランスは良くないなと反省しますが、
そういうわたしから見れば、
世間は
守る 鍛える

かたよりすぎているように見えてしかたありません。
心を強くする
というテーマが共有されていない場で、
叱るより褒めろだの、
競争より平等だの、
いろいろ生ぬるいことを言われても空虚に響きます。
そんなことでは自殺は減らないでしょう。