組織のよりどころ

経営理念とミッションはどうちがう? わが社には理念はないけど社是がある。 ビジョンて何? コミットメントもよく聞くし、クレドっていうのも見たことあるけど、 もっと簡単にモットーでいいんじゃない? ──さあ? 組織が同じ方向でまとまるために、どれを使いますか?


「理念」「ミッション」って
どうちがうの?

という質問、
よくきかれます。
他にも、
「社是」とか「ビジョン」とか、
最近では「クレド」とか、
企業が社員や社会に対して示しているものの種類が
いろいろ多すぎて混乱する方がおられるようです。
今回のテーマをひとことで表すと、
組織のよりどころです。
拠って立つ価値観のこと。
組織を迷わせない行動選択の基準です。
スタイルや型にとらわれず、
ほんとうに心に響く言葉やフレーズを選べばいいのですが、
経営理念ミッションといったよりどころの類を、
どんなふうに表現したらいいかわからない方がたくさんおられまして、
ひとまず
それをカタチにするための便宜上の足がかりが必要でしょうから、
少し解説をしてみましょう。
(≡^∇^≡)
まず経営理念
ごちゃごちゃ迷いたくない方は、
何はなくともこの経営理念という枠組みに想いをこめてください。
中小企業家同友会の経営指針づくりにおいても、
根幹をなすものは経営理念であり、
経営理念の確立がすべての始まりとされています。
はじめに経営理念ありき

いいと思います。
これとは別に、
社是やらミッションやらビジョンを掲げるにしても、
とにかく相互に矛盾しないことが絶対条件です。
経営理念を社長がつくってミッションを専務がつくったら、
正反対のことが書いてあった‥‥
みたいな、
笑えないジョークにならないように。
(≡^∇^≡)
社是っていうのは、
文字どおり「会社が是(=正しい)とする考え方」のこと。
「かくあるべし」っていう言いつけですから、
おのずと短くキャッチコピーみたいなのが多くなります。
あまりソフトでやわらかいものは、
社是と呼ぶにはふさわしくないので、
そういうのをモットーと呼んでもいいかもしれません。
>え?
>これ、どっかで聞いたような商品名ですて?
>いやぁ、気のせいだと思いますけどね。
>実は、TTP、
>すなわち「徹底的にパクる」っつーのが、
>わが社のモットーでしてね。

みたいに、
日常的にサラッと口に出しやすいかわりに、
重みに欠ける響きがなきにしもあらずです。
このように、
社是やらモットーは短いものが一般的なのですが、
一般的だというだけで、
別に文字数に制限があるわけではありません。
それに、
経営理念が長くなければいけないという決まりもありません。
「愛こそすべて」
のような短いフレーズを、
創業者が経営理念だと言えばそれが経営理念です。
たとえどっかからパクってきたフレーズであっても、
ちっともかまいません。
社是だと決めればそれが社是
モットーだと言えばモットーです。
勝手なんですね (ё_ё)
ではミッションは?
日本語では「使命」とか「役割」
達成すべき状態のことですね。
根っこにくる経営理念を踏まえたうえで、
企業が社会に対してどんな貢献を果たしていくか、
それを約束事として表明したものがミッションだといえます。
経営理念は特に成文化してないけど、
ミッションは掲げているという企業もたくさんあります。
それも自由なんです。
ミッション理念がついてくるのも確かですから。
大きなちがいとして、
ミッション「外」に向けて表明することが前提になっています。
社会に対して約束するわけです。
経営理念も昨今では、
ミッションを含むような内容にして、
積極的に外部に向けて発信しようという流れになってきています。
>最高の技術を追求するんだ!
と、
あなたいくら声高に叫んだところで、
>だからなに?
>それでけっきょく社会のなにがどう良くなるっていうのヨ?

と、
シビアに突っこまれてしまいます。
それだけ消費者(市民)の立場が強くなってるってことなんでしょう。
(≡^∇^≡)
次にビジョンですが、
日本語でいうと「将来展望」のことで、
これからどうする、これからどうなる、っていう見込みを、
5年、10年という中長期にわたって内外に示すためのものです。
ここには理念ミッションがすべて織り込まれているはずで、
しかも、
精神論にかたよりがちな理念ミッション
視覚的に補完する具体性が求められます。
そしてビジョンもまた、
外部に向けて広く告知することの重要性が高まっています。
>だからさぁ、
>それでけっきょく社会がどんなふうに変わるか
>ってきいてんだヨォ。

って、
パワーをもった消費者が説明を求めているんです。
説明を求めているのは消費者だけではありませんね。
>理念とかミッションとか、
>寝言みたいな能書きはいりませんので、
>要するにナンボ売ってナンボ儲かるか、
>明快な数字を示してください。

って、
銀行さんに叱られた経験ありませんかね?
(≡^∇^≡)
さあ、
そこで出てくるのがコミットメントという言葉。
日産自動車のカルロス・ゴーンさんがきっかけとなり、
「必達目標」という意味で広く知られるようになった単語ですが、
ビジョンよりもさらに具体的な「公約」「誓約」「約束」などを意味します。
いわばビジョンっていうのは、
>これからこういうふうになりますからね~っ、
>お楽しみにねぇ~

くらいの希望的観測を含んでいるのに対して、
コミットメントは、
>必ずこうしてみせる。
>ダメだったら腹を切る。

くらいの
強い覚悟がこめられたものといえます。
腹を切りたくないならコミットメントなんて発表してはいけません。
それは自爆行為です。
そこらへんのバランス感覚、
大事にしてくださいナ。
(≡^∇^≡)
さて、
最後はクレドです。
クレド(Credo)とは、
「信条」「志」「約束」を意味するラテン語ですから、
けっきょく理念やミッションと同じだ
という解釈でもいいのですが、
よりどころとなる価値観や行動規範を簡潔に表現した文言
‥‥というよりも、
その文言を記したカード等のツールを指しています。
ザ・リッツ・カールトン・ホテルの従業員が、
名刺サイズに折りたためる「クレドカード」を常に携帯し、
共有された価値観を実践しているというので広く知られることとなりました。
実践できる形状になったツールである点が重要です。
シンプルながらも具体的に、
行動指針としてわかるように記されているのです。
クレドを与えられた従業員は、
自己の行動を常にそれに照らし合わせて考えて選択する習慣がつくられます。
ある意味、
経営指針書の濃縮パッケージ版と言えなくもないでしょうか。
というわけで、
いろいろ長々と書いてきましたが、
確乎不抜なよりどころを組織に定着させるためには──
まず経営理念をつくり、
それに沿ったミッションを社会に向けて宣言し、
内外のステイクホルダーに中長期ビジョンを示し、
覚悟を決めて経営トップとしてのコミットメントを発表し、
それらすべてを網羅した経営指針書が完成したら、
その実践習慣をつくるために要旨をクレドに落としこむ。

──と、
こんだけやったら満点じゃないでしょうかぁ~” “(/*^^*)/
やりすぎ(ё_ё)?