小学3年の息子にクンバハカを教える

こっけいな話でしょうが、そのときクンバハカを息子に教えずにいられませんでした。 完全に親バカです。できなくてもわからなくても、それほど大事なことなのかと印象に残ればいい。 自分の親父がそれで救われたんだと、あとでわかればいい。


これものおかげ。
息子のミチハル(仮名)は太鼓の練習があるので、
毎年この季節になると毎晩往復2時間半かけてクルマで里帰りします。
あわただしい年度末から年度はじめにかけて2週間、
わたしは会社を早退です。
息子と2人っきり、
ふだんきけないようなことまで話す時間がたっぷりあります。
ほとんどはテレビの話とかゲームの話とかで、
「妖怪ウォッチ」がどうのこうのっていう他愛もない中味なんですが、
さすがにそういう話題も尽きてくると、
学校での出来事とかもだんだんと詳しく教えてくれるようになります。
親としても気になるので、
なんとなく話題を悩みのほうへ誘導したりします。
するととうとう、
実は学校でいやがらせを受けているという話が本人の口から出てきました。
去年のいまごろも同じような話を聞いていたので、
あーやっぱりかって感じだったんですけど。
やっぱりちょっとショックです。
いじめてるヤツの顔も知ってますし。
あ、
もしかしたらここでいじめっていう言葉を使うのは
認識がちがうかもしれません。
別に殴られたり蹴られたりしているわけじゃないし。
それほど深刻じゃないので、
「しつこいいやがらせ」っていうていどの表現のほうが適切かも。
ま、
とにかく何回か泣かされている。
去年は他の家族といっしょにキャンプしたときに、
わたしの目の前で泣かされたことも2、3度あった。
ママに叱られたくらいで家でもよく泣くし。
泣き出すとなかなか止まらない。
小学校3年生ってこんなもんか?
自分がこの年のころってこんなに泣いてたかな?

──覚えてない。
だから去年、
クルマの中で泣きながら学校がつらいって打ち明けてくれたときは、
黙って聞いてました。
あのころは成績もパッとせず、
塾に行くのもいやだと言ってた。
ところがたった1年でミチハルくんもだいぶしっかりしてきた。
自分が弱いのがいけないんだっていうふうに、
ちょっと気づいている感じがあった。
クラスの友だちがおおぜい見ているまえで泣かされて、
「ミチハルってこんなことしてるで」ってウソばっかり言いふらされて、
かなり怒っていたし傷ついていたけれど、
そんな意地の悪い連中はどこにでもいるもんだとわかってきている。
わたしもかなり慎重に会話を進めます。
つまり、
事象のほうにとらわれないように。
こんなことがあったから泣かされた
とか
だれそれくんはこういうところが許せない
とか、
外の事象に原因があるような意識

つられてはいけない。
>そんなことがあってもどんなことがあっても泣かない、
>強い人間になったらいいんじゃないか。

っていう方向にもっていきたい。
こんなとき、
傾聴の技術を知っておくと重宝しますね。
うなずき、あいづち、くりかえし‥‥。
なが~い沈黙も何かのメッセージ。
さいわい時間はたっぷりあります。
そういえば去年、
目の前で泣かされたミチハルにこう言ったことがありました。
>あるよ。
>いじめられたり泣かされたり、
>そういうこと、あるある。
>大人になったらもっといっぱいある。
>もっとひどいヤツもいっぱいおる。

いやがらせをして喜んでいたガキのことには
ひとことも触れず。
>そういうめにあうたんびに、
>いちいち泣くんか。

って。
あのときミチハルは悔しいばっかりで、
なんで大人のくせに助けてくれなかったのか、
理解できないからよけい悔しかったと思う。
だけど今回はちがいました。
弱い自分が嫌いだって。
強くなりたいという明確な意思表示があった。
だから、
>よしっ、
>じゃあおまえがいちばん強くなれる魔法を教えてやる。
>すぐに効いて一発で強くなれるすごい魔法やぞ。
>これさえ知ってたらもう誰にも泣かされへん。
>どや、知りたいか?

と、
こうきいたわけ。
>そんな魔法あるん?
ある。
あるとも。
パパがこんなに強くなれたのは、
その魔法のおかげだ。
いつでも楽しそうに生きてるし、
お金もいっぱい持ってる。
おうちもピカピカ、
オフィスもピカピカ、クルマもピカピカ。
マラソン走って鍛えてるから病気もしない。
カゼすらひかない。
知ってるよな。
──ちなみにミチハルは3年になってから、
将来は社長になると言うようになった。
>パパの会社を継ぐ。
と、
そんな言い方をするようになった。
うちの女子社員がかわいいからか(ё_ё)?
いや、
それはちがうと思うけど、
これを聞くと男親はたまりませんな。
じーんとします。
姉の持ってる「ハッピーお仕事ずかん」(ドリームワーク調査会著)って本を見て、
パパは何の仕事をしてるんだときいてきたことがあったから、
「ソフトウエア開発技術者」だって答えた。
そしたら息子は、
自分もソフトウエア開発会社の社長になるんだと決めてる。
意味なんてわからずに決めてるんでしょうし、
あとまだ30年近くかかる話ですし、
将来の夢なんてまた変わるもんでしょうし、
実現する可能性は未知数だとわかってますけど、
それでもうれしいです。
泣けてきます。
それまで会社はつぶしたらあかん!
って、
マジでそういう気持ちになります。
男は単純。
>なんでこんなバカ息子に会社を継がすんやろ?
って、
よその会社のことは笑ってきたくせに。
アホですね。
それほど自分の息子はかわいいってことでしょう。
──こっけいな話なんですけど、
気づいたら夢中でクンバハカを教えようとしてました。
最初はクルマの中で。
>ケツの穴にめっちゃチカラ入れて締めろ。
>とにかくそれや。
>痛いのもムカつくのもそれで止まる。
>もう泣かんですむねんで。

家に帰ってからお風呂でもう1回。
>ヘソの下にグッとチカラ入れんねん。
>そうそう。
>ほんで肩のチカラはスッと抜く。
>ゆるゆるにしてみいや。
>チカラはぜんぶ下のほうへ持っていくんや。
>ヘソの下とケツの穴やで。

次の日には呼吸法もいっしょに教えた。
>細く長く吐くねん。
>それがコツや。
>フーッと、フーッと、ながーくや。
>そしたらしぜんにヘソの下にチカラが入るやろ。
>ちょうどええねん。
>カチカチになるまでヘソとケツにチカラ入れる練習すんねんで。

ミチハルは、
学校で泣かされたときの悔しい気持ちを思い出して、
やる気になってる。
だからチャンス。
強くなるためには、
これがいちばん大事なんだと念を入れます。
学校では呼吸のしかたは教えてくれません。
吸ったり吐いたりするだけのもんだってことでしょうけど、
どのように吐くか、
そしてまた吸うかによって、
心の練られ方に雲泥の差がつくっていうことを知らないで育つとしたら惜しい。
ほんとうは坐り方も教えたかったけど、
クンバハカっていう言葉は、
少なくとも頭にインプットされたと思います。
魔法なんだよ(≡^∇^≡)
クンバハカっていかにも魔法っぽい響きがありますしね。
子どもの心は素直だから、
きっと記憶にストレートに染みこんでくれたと思います。
忘れてしまっててもいい。
大人になってから、
ふとまた思い出してほしい。
親父が「いちばん大事なんだ」と言ってたことを、
なんかのきっかけで思い出してほしい。
わたしが死んでからでもいい、
この言葉を調べたら、
あとはみんな自分でわかる。
自分の父親が大切にしていたものがわかる。
こんなもんの必要がないくらい強い人間になってたら、
それはそれでけっこうなことですけどね。