重要成功要因を書き出す

自社の分析で肝心なのは「強み」を知ること。 自身の「強み」は自分では気づかないもの。 だから気づくだけでも競争力になる。 強み探しは「自分はすでに成功者であって確たる強みがある」という前提に立つ。 「成功は手の届かないもの」という消極的な想念を抱いてはならない。


誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思っている。だが、たいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い。しかし何ごとかをなし遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。できないことによって何かを行うなど、とうていできない。P・F・ドラッカー「プロフェッショナルの条件」より

つい先日、
経営指針づくり勉強会の中で、
重要成功要因

書き出すというワークがありました。
経営指針作成の過程では、
ほんとうにいろんなことを書かされますね。
成文化っていうくらいですからね。
書く
っていう作業がとにかく大事なんです。
記録的な猛暑の中、
みなさんほんとうに熱心です。
今後の事業の発展を願わずにはおられません。
ところで、
あれこれいろいろ書くのはなんのためでしょうね。
今回のテーマは「自社を知る」なんですけど、
経営指針書づくりの全体を通して、
自分(自社)の「強み」を見つけるということが、
いちばん肝心な目的だとわたしは思っています。
そのくらいわたしたちは、
自分自身の「強み」についてよくわかっていません。
特に日本人は謙虚で自己卑下の大好きな民族ですしね、
わかった気になっていてもまた見失う。
ですから、
「強み」を知ること自体が競争力になるんです。
SWOT分析
っていうのはごぞんでしょうか。
  • 強み-Strengths
  • 弱み-Weaknesses
  • 機会-Opportunities
  • 脅威-Threats


4つの単語の頭文字をとってこういう名前がついているんですが、
自社あるいは自分を知り、
実効性の高い計画を立てる上で極めて有用なツールです。
経営指針作成の手引きの中にも、
よく似たことを書かせるシートがあります。
第3章「経営方針」の中の4「経営戦略をたてる」にある、
「事業戦略を考えるシート」というのがそれです。
このシートは
  • 環境・市場の変化
  • お客は何を望んでいるか
  • わが社の持ち味
  • わが社の弱点


4つを書かせたあとに
  • 経営戦略(どのように個性を発揮するか)


書くという構成になっています。
ここでいう
持ち味
っていうのが「強み」のことですよね。
「脅威」だとか「機会」だとかいうとむずかしくなるので、
質問のしかたを変えてあるわけなんですが、
意味は同じなんだということに気づいてください。
  • 強み = わが社の持ち味
  • 弱み = わが社の弱点
  • 機会 = お客は何を望んでいるか
  • 脅威 = 環境・市場の変化

です。
さすが中小企業家同友会、
いちいち言葉がやさしいんですね。
で、
はじめに戻って
重要成功要因
なんですが、
これも要するに「強み」のことです。
>だったらはじめっからそう言え!
って話なんですけど、
むずかしい言葉がぞろぞろ使われる勉強会に出ていると、
それだけで自分が賢くなったような錯覚が起こることがありますでしょ?
重要成功要因はけっきょく書き出せなかったが、
「CSF」っていう単語は覚えた。

──みたいな。
それが主催者の狙いだったりしますから、
雰囲気にだまされて調子に乗らないように。
重要成功要因は、
CSF(Critical Success Factor)と略されることがあります。
ところが、
KFS(Key Factor for Success)とかKSF(Key Success Factor)
とかいう用語もあり、
どれも意味はいっしょでどれもまちがいではありません。
こんなことは、
よい子のみなさんは死ぬまで知らなくてよろしい(ё_ё)

でもついでなので
コア・コンピタンス(Core competence)
っていう言葉くらい覚えときましょうか。
直訳すると「核となる競争力」という意味で、
これも要するに「強み」のことです。
>だったらはじめっからそう言え!!
‥‥なんですけども、
ぶっちぎりに強い能力を表現するために使います。
とにかくそれもこれも
強み

見つけるため。
手を変え品を変え、
あなたが見失ったあなた自身の「強み」を、
どうにかして見つけてもらいたいがためなんですね。
で、
重要成功要因を書いていただいている最中に、
ちょっときいてみたんです。
>はい、この中で、
>自分は成功していると思われる方、
>手を挙げてみてください。

と。
そのとき、
20人くらいの経営者のみなさんが参加されてたんですが、
誰も手を挙げなかったんです。
>自分のことですからね。
>人と比べる必要ないんですよ。
>成功の定義なんて決まったもんがあるわけじゃなしね、
>自分なりに「オレは成功してる」って感じてたら、
>それでいいんですよ。

でも、、、、やっぱり、、、、
反応なし。
やっぱりねって感じなんです。
それが中小零細ってもんでしょう。
>オレは成功してる。
なんて恥ずかしくてとても言えない。
「内心こっそり」も、なし。
まずはじめに、
そこんとこ変えません?

わたしは心の底から思うんですけど、
みなさんはすでに成功者です。
ここにいるだけでかなりの勝ち組です。
だってまだ
会社つぶしてないんでしょ?
創業5年、10年、15年、
もうそれってすごくグレイトなことじゃないですか。
クソ暑い中、
誰に強制されたわけでもなく、
自らの意志でここに集まって前向きに勉強してる。
こんなこと、
したくったってできない人のほうが圧倒的に多いんですよ。
成功要因っていうのは、
ないものを探すんじゃなくて、
みなさんがすでにもっているものを書き出そうっていう話なんです。
もしなんの「強み」もない会社なら、
もうとっくにつぶれちゃってなくなってるはずなんです。
人間もいっしょ。
もし運が悪かったというなら、
いまもうすでにみなさんの命はないはずなんです。
>そやかて、
>借金ばっかり増えて、
>いっこも儲かってませんがな。

‥‥って、
おっしゃるかもしれませんね。
生きてるだけで丸儲け
──って言葉、
ご存じありません?
これ、
わたしは大好きなんで、
自社の経営理念の中にも入ってます。
誰の言葉なんでしょうか。
わたしは明石家さんまさんが言ってるのを聞いたんですが、
めちゃめちゃいい言葉だなと思います。
儲けてる
ってことなんですよ、
あなたはすでに。
いままでもじゅうぶんに幸運だったから、
ここでこうやって息してられる。
丸儲けな上に、
まだ社長として事業をやらせていただいている。
それにね、
借金できるってことは、
それだけ成功してきた実績があるってこととちがいますかね?
恵まれすぎ
なんです。
感謝しないとバチが当たります。
このわたしの意見が、
正しくなかったとしても、
かまわない。
そういうふうに自分の脳に教えこむ。
自己暗示のちからはあなどれないんですから、
ウソでもそうしていただきたい。
人間の脳はある意味アホですから、
それがウソだろうがなんだろうが区別ができません。
あなたが根気よくそう教えたらそう信じこむんです。
あなたは成功者です。
いいですか。
決してこれを否定してはいけません。
ピンと来なくてもいい。
「成功は自分の手の届かないところにある」
といった消極的な想念をもしあなたが自覚なく握っていたとしたら、
あなたはこの先もずっと、
この想念を現実化させてしまうことになります。
あなたが自分でわざわざ
成功を手の届かないところに遠ざけ続ける
ってことです。
最後になりましたが、
成功要因の書き出しと同時に、
「わが社の略年史」

作っておいてもらいたい。
「売上高・付加価値」「経営利益」をグラフにしたもので、
それに対応する経営環境(どの期に何があったか)を下に書きこみます。
「経営指針作成の手引き」第3章にひな形がありますので、
ご自身の経営指針書にはぜひ、
この年表を入れていただきたい。
そのグラフが、
二代目のあなたが社長を継いでからずーっと右肩下がりだとしても、
あなたは成功者ですからおまちがえなく。
それでまだつぶれないなんて、
どんだけ強い会社なんでしょうって話ですやん。
明日にもつぶれそうなんだって言っても、
まだつぶれてないないのは事実ですから、
すばらしいじゃないですか。
ま、
ふつうは上がったり下がったりしてますわね。
創業してまだ間がないという方は、
人生の略年史をつくってみるのもいいでしょう。
グラフが右肩上がりになる、
そのちょっと手前に成功要因があります。
あなたは成功者なんです。
他の人にはなかなかない「強み」があるからこそ、
「いま、ここ」で幸運にも、
わたしのメッセージを受け取ることができました。
そういうところから
ご自身の成功要因を感じ取ってください。
じゃあそれ、
次回までの宿題にしますから。